システム開発のための会社を設立しようと考えている男性(53)が、資本金をいくらにしようかと悩んでいました。資本金とは、会社を始めるときにその会社が持っている自己資金のこと。資本金が多い会社は、資金が潤沢で余裕のある運営ができます。一方で、無理に多くしてしまうと、起業者自身がお金に困るケースもあるようです。今回は資本金の額を決める方法についてお話しします。
【資本金の額】新会社法の施行で、株式会社で1000万円、有限会社で300万円必要とされていた最低資本金制度が撤廃され、資本金の額に制限がなくなりました。極論すれば、資本金は1円でもいいということです。
ただし、資本金は外部から見て、会社の規模や体力を表す指標の一つですので、ある程度の額は用意した方が無難です。開業に必要な資金に、3カ月分程度の運転資金を合わせた額を目安にするのも良いでしょう。というのは、会社設立から、売り上げが立つようになるまで3カ月程度はかかることが多いからです。
なお、資本金は後から増やすこともできます。これを「増資」と言い、法務局への申請が必要。また、設立時の資本金が1000万円以上の場合、初年度から消費税の課税業者になります。1000万円未満なら最大2年間、消費税の納税が免除されます。
【現金以外の方法による出資】資本金は、現金以外の不動産や物による出資も可能。これを「現物出資」といいます。具体的には、土地や建物、株式や国債、社債などの有価証券、機械や自動車、特許権などです。例えば、飲食関連なら調理器具、出版関連なら版権などを現物出資するケースがあります。
現物の価格は市場価格、つまり時価で計上しますが、額面が500万円を超える場合、検査役(弁護士や公認会計士など)の調査が必要です。この場合、調査に時間と費用がかかるので、手続きを簡単にしたい方は、現物の額を500万円以下にするのがお勧めです。
男性は、開発に時間のかかる大規模な案件を受注するため、資本金を多めに準備した方がよいと判断しました。現金のほか、パソコンなどを現物出資し、資本金の額を増やして取引先からの印象を良くすることにしました。