前回のコラムでは、市場調査が起業するうえで成否を分けるとお話ししました。もう一つ忘れてはならないのが「競合他社」の調査です。
特に「シニア起業」では、今までの経験や人脈を活用する方が多いので、起業する際の事業内容も、前職の延長線の内容を選ぶことが多くなります。そのためか、他社との違いや自社の強みを意識することを忘れがちです。前の会社では売り上げが上がったとしても、起業して1人で行う場合、同じように売れるとは限りません。改めて自社の商品・サービスの良さを考えましょう。
お客さまの立場になり、「なぜ、自分の所から買うのか」という点を明確にして起業を考えましょう。大手企業を含め、どの業界も競争が激化しています。競合他社の中から自社の商品・サービスを選んでもらうためには、その理由が重要です。お客さまが満足し選びたくなる理由、つまり競合他社との「差別化」が必要です。「差別化」のための3つの手順をお伝えします。
◆(1)競合他社を調べる
インターネットなどで検索するだけでなく、サービスによっては実際に歩いて競合他社の商品・サービスを調べます。目安として、約10社をピックアップしましょう。
◆(2)比較表を作成する
競合との違いをまとめた表を作成します。縦に競合他社名、横はお客さまがサービスを比較すると思われる項目を入れます。例えば、価格、メニュー、立地、営業時間、提供方法、納期です。もちろん、縦の一番上には自社を入れてくださいね。
◆(3)自社の位置付けを明確にする
一覧表で競合他社と比較すると、どの点が自社に有利でどの点が不利か、自社の特徴やセールスポイントが明確になります。そして、お客さまに自社の特徴を覚えてもらうために、営業の際に話したり、チラシやパンフレットなどで強調したりしましょう。
具体例として、結婚相談業を考えてみましょう。競合S社は40代以上対象で会員数は数百人、コンピューターで素早くマッチングを行い、価格は高め。一方、Aさんが始めようとしている結婚相談所は、口コミで集めた知人・友人が会員で、アットホームな雰囲気。ゆっくりと時間をかけてマッチングを行う人物重視、価格はリーズナブルです。この場合、競合S社と対極に位置したサービスを提供できることがAさんのセールスポイントです。
これら競合他社調査は起業後も定期的に実施します。差別化が図りづらくなったら、自社のサービスを随時、見直しましょう。
「お客さまが選びたくなるサービス」を提供し、そのサービスが「競合他社と差別化できている」こと。これが「ゆるり」とした気持ちで、無理なく始められるシニア世代の「ゆる起業」の理想です。