現状人口の4人に1人が65歳以上、20年後には3人に1人が65歳以上になると見込まれる超高齢社会では、60歳で「隠居」という感覚は昔のこと。現代の50、60代は体力・気力ともに若い人に劣らず充実し、現役そのものです。
内閣府のデータによると、65歳以上の約7割は今後も働きたいと考えています。なぜ、シニアの方は働きたいのでしょうか。65歳以上の男性の「働きたい」理由のトップ3は、(1)健康を維持したい(2)収入を得たい(3)経験を生かしたい(総務省「就業構造基本調査」より)-で、「収入を得る必要が生じたから」は年齢とともに減少しています。
「今までの経験を生かしたい」「仕事を通じ、人と接して刺激を受けたい」といった、より人生を楽しむことを目的に「働きたい」シニアも多いようです。
ところが、総務省の平成23年「労働力調査」によると、65歳以上の就業率は4割弱で、働きたいシニアの約半分は働きたくても働くことができていません。
現在の日本で、65歳以上のシニアの方の「働きたい」意欲を満たす選択肢は、(1)再雇用などの継続雇用(2)再就職(3)起業-の3つとなります。
昨年4月から高齢者雇用安定法が改正され、60歳以降の希望者全員が65歳まで働けるようになりましたが、65歳以降も会社から必要とされる人はほんの一握りです。また、継続雇用では、給料が半減することも珍しくなく、モチベーションが低下してしまいます。
さらに、高齢者の再就職は、仕事内容と本人の希望とマッチせず、今までの経験を生かせないことが多いようです。
50、60代で起業する人が増えているのは「それならばいっそ、自分がやりたいことをやろう!」ということでしょう。事実、起業家全体でシニアが占める割合は、昭和54年では2割に達していませんでしたが、平成19年には4割を超えています。働きたくても良い職場に巡り合えず、自分の経験を生かす仕事がなかったとき、「起業」という選択肢を選ぶ方が増えているのかもしれません。
また、最近では、企業が再雇用による人件費負担を避けたいと、起業セミナーを社内で実施したり、または社外講座を社費で受けさせたりして、シニア世代の社員に起業を促すこともあります。中には、定年前の1、2年間に、本人の希望に基づき、会社に勤めながら定年後のライフスタイルを考える制度を持っている会社もあります。私のところにも、「再雇用」ではなく、「起業」の道を社員に提案したいと相談に来る人事部の方も増えてきました。
シニア世代の起業は、自分の幸せや充実感を得るためのものであってほしいと思います。体力や気力も十分、知識や経験も豊富。今までの経験や人脈を生かして、楽しみながら収入を確保する。これがシニアの理想の働き方ではないでしょうか。