海外のオーディオ機器を輸入販売しようと起業を考えている男性(62)がいます。客に迅速に商品を届けられるようにするため、ある程度の在庫を持ってから起業しようと考えています。今回は、その際に重要になる資金繰りを円滑に行うために必要な「月次収支計画」についてお伝えします。
月次収支計画は「資金繰り表」とも呼ばれます。売り上げは、即金で決済されず、将来的に支払いを約束される「売掛金」となる場合があります。このとき、売り上げと入金に差が生じてしまいます。さらに起業直後は信用力が低いので、現金で仕入れなければならない場合もあります。このため、入金がないのに、支出が生じることも考えられます。
利益が出ていても資金が不足すれば、仕入れ代金や税金が払えず「黒字倒産」してしまいます。収支計画は収入と支出を把握するタイムスケジュールとなります。近い将来、事業運営にいくら必要になるのか、資金の動きを把握できるので便利です。
作成方法について説明しましょう。月初めに持っている資金に、当月の収入を足して、支出を引きます。それぞれ時期に注意してもらいたいと思います。
収入は、主に事業から得た利益となりますが、売掛金ではなく、その売掛金を回収して、現金が手元に入る時期に計上します。
支出は、仕入れ代金や諸経費ですが、そちらも実際に支払う時期に計上します。計算後の金額は当月末の資金残高となります。その額は、翌月の資金として繰り越されるという流れです。
当月末の資金残高がマイナスの場合は、資金不足に陥って事業が回らなくなるということです。事前に売掛金を回収したり、支出額を見直したりしなければなりません。場合によっては、金融機関からの融資などで追加の資金調達を行う必要も出てきます。
しかし、外部からの資金調達には時間がかかり、融資が認められない場合もあるでしょう。3カ月前の段階で、資金不足を予期できると不測の事態への対策の幅が広がります。収支計画作成の目安としてください。
男性は、月次収支計画を作成していませんでした。そこで計画を立てて、適正な在庫がどの程度なのかを把握することができました。計画的な経営のため、起業後も継続していきたいと考えています。