地域のコミュニティーづくりのために、カフェを開きたい女性(53)がいました。物件の敷金や内装工事の他、厨房(ちゅうぼう)機器や備品も必要ですが、自己資金だけでは足りません。金融機関からお金を借りるつもりですが、実績がないので融資の審査が通るかどうか不安とのこと。今回は融資を受けるときに大切なポイントをお話しします。
起業家が金融機関に融資を申し込む際は、事業計画書が重要な意味を持ちます。事業計画書とは、簡単に言えば(1)何を(2)誰に(3)どのようにして売る予定なのか-を具体的にまとめた書類。このなかで融資審査において特に重視されることが3つあります。
1つ目は「創業の経緯」。起業までのご自身の経歴や、創業の動機、目的、経営理念などを明確に記載します。経歴にはアルバイトやパートの経験も含め、できるだけ詳細に書いておきましょう。
2つ目は「融資の使途と自己資金」。要は「借りたお金を何に使うか」「自分で用意した額はいくらか」ということです。融資の対象は通常、(1)資産となるような設備費(2)向こう3カ月分程度の運転資金-です。女性のケースなら敷金や内装工事代、厨房機器などは(1)、賃料や食材の仕入れ代などが(2)に該当します。
審査では(1)と(2)の総額のうち、どの程度を自己資金でまかなえるかを見られます。つまり「どれだけお金を用意できたか」が「起業に対する覚悟」を示すといえそう。自己資金ゼロでの融資申請はお勧めしません。
3つ目は一番大切な「返済計画」。借りたお金は当然返さなければなりませんから、返済原資になる毎月の利益の見通しを立てるために「月次利益計画」を作ります。毎月の売上高から経費を引いて利益を算出してみましょう。大切なのは「利益が出るタイミングはいつか」「その利益は継続して出せるか」。これらを具体的に示せるかどうかがポイントになります。
女性は事業計画書をより具体的なものにするために、内装工事や備品などの見積もりを業者に依頼。それらを基に36カ月分(向こう3年分)の月次利益計画を立てて、事業計画書を書き直しました。できるだけ万全の準備をして融資を申し込むつもりです。