今回は産後ケアやベビーシッターを中心に生活支援事業を手がけるss―consul(横浜市)の小沼薫社長(50)の取り組みを紹介します。小沼社長は金融、人材業界で勤務していたころの経験を活かし、企業向けの採用支援に特化したコサルティングを行おうと、2010年11月に起業しました。
医療施設の採用制度が他の業界と比べて10年ほど進んでいないと感じたことから、医療施設に的を絞ってスタートしたといいます。
ところが起業してから間もなく、取引先から「退院後の患者を対象にした、家庭でのケアや日常生活のフォローができないか」という相談に対応することになりました。これがきっかけで一般家庭向けの事業を始めるようになりました。
起業当初の目標である採用コンサルティングとは全く違った事業でしたが、やりがいと面白さを見いだした小沼社長はこの事業に注力していきます。
事業化した当初は年配の利用者が多くなると想定していました。しかし出産を終えた母親の回復や育児をサポートする産後ケアや、ベビーシッターの需要が多かったとのことです。これを受けて、小沼社長はスタッフを増やすなどしてこのサービスを拡充していくことにしました。
今は20〜40代を中心とした産前・産後の状態にある家庭が利用全体の8割を占めています。ほかにも共働き世帯をはじめとする多忙な家庭の人たちが、仕事と家庭を両立するために利用することがあるそうです。
18年に横浜市の「産前産後ヘルパー派遣事業」を受託しました。これをきっかけに、東京都内や埼玉県内のそれぞれの市区町村から産後ケア事業の受託が相次ぐなど、順調に仕事を増やしていきました。
小沼社長は仲間とともに、産後ケアに関する協会を立ち上げて認定資格も作るなど、人材育成の取り組みも始めました。顧客の細かいニーズにも専門知識をもって対応することを目指しています。
資格取得のための講座の受講希望者は全国に広がりつつあります。資格を取得した人は、協会スタッフとして仕事をすることができます。
起業後に苦労した点を聞いてみると「始めたころは少し大変なこともあったが、一緒に働く仲間に恵まれたおかげで苦労だとは思わなかった。やりがいがあると思ったことの方が多い」と話していました。
起業を考えている方に送るメッセージを尋ねると「起業を支援する機関の活用や助成金・補助金の利用をお勧めしたい」とのことでした。小沼社長自身は「敷居が高い」と感じ、そういう支援制度などは利用しませんでした。ただ利用しなかったことに後悔しているそうです。
小沼社長のお話は、起業当初にやりたかったことや、自身でやれることは顧客の要望や月日がたつことで変化していくものだということでした。そして、それらにどう対応していくかがポイントであることを実感することができる内容でした。
(銀座セカンドライフ社長 片桐実央)