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日経MJ・ゆる起業のススメ

2020年11月27日

【50歳からのゆる起業】介護問題を解決する支援者養成

 田中肇さん(64)は大手証券会社、人材紹介業、老人ホーム運営会社を経て57歳の時に独立しました。独立した動機は「高齢者の介護問題」が社会問題となるなか、介護保険制度で利用できる介護サービスだけでは、解決できない介護問題が多いことを知ったからでした。そのような問題の予防と解決には、自らの経験を多くの人々に共有してもらうことが有効だと考えたそうです。


 そして、NPO法人の介護ライフアドバイザー協会を2013年に設立しました。自分自身の知識と経験をもとに、介護問題の予防・解決を支援できる資格者として介護ライフアドバイザーを養成。その資格者の仕事をサポートする事業からスタートしました。


 受講者は司法書士や行政書士、弁護士などの士業のほか、ファイナンシャルプランナーや不動産や保険の専門家まで幅広いといいます。今では91名の方が資格を取得して活動しています。


 さらに15年には、企業や団体の社員の方の介護離職の防止を目的としたワークケアバランス株式会社を設立。介護離職防止のセミナー・講座等を各地で実施しています。


 法人の立ち上げた背景には2つの理由があるそうです。1つは介護問題を予防解決できる専門家を社会に供給すること。2つ目はその専門家に介護離職防止の活動の場を提供することです。「この2つの目的を遂げるため」にわざわざ2つの法人を設立したといいます。


 田中さんは、介護や医療の専門職のアドバイスだけでは介護問題に対応できないケースも多いと感じてきたそうです。このため士業や資産活用の専門家の力を使って、「介護前〜介護中〜介護後」までの準備や、対策のアドバイスを受けられる環境が望ましいと考えています。顧客からは「一貫してサポートしてくれるから安心する」と好評だそうです。


 田中さんは「経験を生かし、類似サービスがない領域で起業したい」と考えながら、経験を積んできました。証券会社でお金や税金のことを学び、人材紹介会社では医療介護のサービス提供者側のニーズを知りました。さらに老人ホーム運営会社では営業職を、このほかにセミナー講師業や50歳を過ぎてから2年ほど介護現場に携わり、これまで幅広い仕事にチャレンジしてきました。義母や実父の介護も経験しています。


 ただ実際に起業してみると、苦労の連続だったそうです。田中さんの事業は、介護保険制度を総合的に補完する知識を売るサービス業です。


「社会全体が高齢者介護に関する知識不足状態で、サービスの内容や価値を理解してもらうための営業活動にかなりの時間がかかる」と話していました。


 しかし今では、有資格者となった「介護ライフアドバイザー」の仲間とともに行政機関や福祉団体、商工会議所、銀行と連携し、セミナーや個別相談会を通じて、その重要性を次第に理解してもらえるようになってきたそうです。


 足元では新型コロナウイルスの感染拡大が続きますが、「介護ライフアドバイザー養成講座」のオンライン講座が一般の人にも受け入れられる環境が整ってきたことは追い風だといいます。


 これまでは大都市中心の活動でしたが、オンライン講座により全国各地で専門資格者が育成可能になりました。また各地の活動を支援することも可能になり、今まで以上にスピード感のある事業展開が可能になると考えているそうです。


(銀座セカンドライフ社長 片桐実央)

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