定年前後の方々に「自分のスキルの棚卸し」をすすめ、自分に合った起業スタイルを検討してもらう。それをサポートするのが、わたしたち銀座セカンドライフの仕事です。シニア起業では、これまで会社生活で培ってきたスキルやネットワークを最大限に生かすべきです。その方法をアドバイスしていますが、スキルの棚卸しに悩む方も少なくありません。
しかし、今回紹介する加瀬滋(かせ・しげる)さん(65)のシニア起業の道のりはまっすぐで、ぶれがなく、会社生活で得たものすべてを再構築してスタートしました。シニア起業のいいお手本かもしれません。
加瀬さんは新卒で外資系の大手コンピューターメーカーに入社し、生産管理、営業などのキャリアを積みました。英会話の教育も受け、国際調達部門の主任まで勤めました。ところが、そこに「パソコン」という大きな波がやってきます。
「30年前のことです。パソコンは家電になる、ということが叫ばれました。私もその波に乗って外資系のIT企業に移り、生産管理の職に就きました」(加瀬さん)
その後、外資系情報機器会社に移り、中国・武漢でのプロジェクトにも参画。波瀾万丈の時代を過ごします。
「私が今でも自信のあること、楽しいことは国際調達でしょうか。これまでの経験で培ったネットワークを生かして、日本で必要な部品を世界のいろいろな場所から取り寄せることができます」
2008年、加瀬さんは60歳でIPOテクノ株式会社(http://www.ipo-corp.com/)を設立しました。それは、加瀬さんのキャリアやネットワークをそのまま生かし、中小企業のIT案件を広く手伝う事業です。
「お金がどうというのではなくて、今までやってきたことをお返ししたい。そんな気持ちです。私は、仕事をしていないとダメなんですよ」
そういって加瀬さんは充実した笑顔を見せてくれました。(取材・構成 藤木俊明)