夕刊フジ・定年起業への挑戦
世界に和の文化を伝えたい 社会貢献型の事業を考えている人に向いた一般社団法人
わたし(片桐)にシニア起業の相談をされる方の中には、日本の誇るべき「和の文化」を海外に広めたいという思いで起業される方が多くいらっしゃいます。今回紹介する和田政子さん(58)は、わたしが起業した時から応援していただいているのですが、まさに和文化の集大成のような女性です。小さなころから茶道に親しみ、現在では表千家台天目、小原流いけばな教授家元2級、全日本きものコンサルタント1級をはじめ、書道、ドライフラワーなど、さまざまな資格や実績を持っています。 和田さんの大きな転機は1997年、友人に招かれてフランスに渡り、パリの日仏文化センターで茶会のデモンストレーションを行ったことでした。それが現地で大きな評判を呼び、2002年まで定期的に渡仏し、パリのみならず、リール、ブーローニュなどでも、日本の茶道文化を披露することとなったのです。 「フランスでは、大手ブランド会社、大手自動車会社からも、日本の顧客にどう対応すればいいのか知りたいということで、和文化を伝えるセミナーの依頼がありました。社員の方には、お茶や生け花、折り紙などの講座に熱心に参加いただきました。現在では、リールやルマンなど各地の自治体や企業などの文化交流の場でも、日本文化紹介の機会をいただくようになりました」(和田さん) こうした経験を踏まえ、和田さんは海外への日本文化の発信をさらに強めたいと考えました。まずは任意団体「日本伝統文化国際交流協会」を立ち上げ、定期的に勉強会を開催しています。勉強会のテーマは、狂言、薩摩琵琶、相撲、長唄などさまざまです。また、同協会はフランス支局を開局し、フランスとのやり取りをより緊密にしています。 さらに活動しやすいように、和田さんは法人設立も計画しています。わたしが相談に乗っていますが、一般社団法人を念頭に置いています。通常の株式会社設立よりは費用がかかりません。ある程度の制限はありますが、社会貢献型の事業を考えている人に向いた法人形態でしょう。 「海外に向けてはもちろんですが、日本国内でも伝統文化に触れる機会が減り、日本のことを知らない日本人が増えています。私たちは事業を通じて、日本人一人一人が日本の伝統文化について語れるように活動していきたいと考えています」(和田さん) (取材・構成 藤木俊明)