今後、会社員の働く環境は大きく変化する。4月より施行の「高年齢者雇用安定法の改正」やジョブ型雇用の広がり、そして何より見通せないコロナ禍による景気への影響だ。シニア世代に突入する会社員は自身の人生デザインを再設計する必要に迫られる。その有力な選択肢として「定年起業」を検討する人も多いが、コロナ禍ではなかなか踏み切れないという声も多いようだ。
本連載では多くのシニア起業家にお話を伺ってきたが、多かった答えをまとめ、言語化すると「収入はそこそこでも自分の好きなことや得意分野を仕事にできて、日々働けることを幸せに思う」ということにつきる。
シニア起業を支援する銀座セカンドライフ代表取締役片桐実央さんも「起業というと大きなリスクを抱えて、一か八かのイメージを持ってしまう方も少なくありません。そうではなくて、“ゆる起業”でいいのです」と語る。
例えば、年金が入ってくる時期を計算し、年金とあわせて月10万円の収益で十分生活できるとしたら、その収益を目指す計画にする。そして無理なく、できるだけ好きなことや得意なことを自らの仕事にしていくよう設計する。そうしたことで規則正しい生活が送れ、社会とのコミュニケーションも取り続けることができ、孤立することもない。心身の健康にもいい影響を与えそうだ。
人生デザインの再設計を行うべき時は近いかもしれない。コロナ禍であっても情報収集ぐらいはしておきたい。具体的な起業案まで考えがまとまらなくても、自治体の起業相談窓口や起業サポート施設などを訪れ、同世代の人たちがどう動いているのか、自分の目で確かめてみてはどうだろう。 (取材・構成 藤木俊明)