「FIRE(FinancialIndependence,RetireEarly)」という言葉が注目されている。かんたんに言えば「経済的に自立して早期リタイアするライフスタイル」だ。
早期リタイアというと「大金をつかんで引退して悠々自適」というイメージを持つ読者も多いだろうが、そうではない。大ざっぱに説明すると、生活に必要な費用をきちんと計算し目標額をためる。そして早期リタイアした後もムダな費用を切り詰め、その範囲中で暮らしていく。一切働かないわけではなく、必要があれば投資や何らかの仕事で収入を補う。
FIREの考え方は米国の若い世代に共感を集めているが、日本のミドルシニアにとっても参考になりそうだ。シニア世代の働き方に詳しい、株式会社シニアジョブ代表取締役の中島康恵(やすよし)さんに話を聞いた。
今年4月の法改正で70歳まで働ける環境が整備されていく。現在企業で働くミドルシニアには、今までのシニア世代のような定年後はやってこないと中島さんは警鐘を鳴らす。不本意な環境で、また恵まれない収入で働き続けることを余儀なくされる可能性も高いと話す。
であれば、例えば50代で人生設計を再構築する。つまり、日本版FIREも一考すべきだろう。早期退職で一定の資金を得て、65歳からの年金支給まで自分らしい生き方を選べるかどうか計算する。その結果、そこまで手元資金だけでやっていけないと思うときは、再就職するなり、週に何日か働くなりして収入を補填(ほてん)していく。中島さんは「シニア世代の人材市場はかつてないほど大きくなり、動いています」と話す。今年は、人生設計を再構築するタイミングかもしれない。 (取材・構成 藤木俊明)