定年起業を念頭に置いて、「今年こそは何か資格を取得しよう」と考える人もいるだろう。資格Times(株式会社ベンド運営)が実施したアンケート「2021年度取得を目指している資格」によると、1位は「FP(ファイナンシャル・プランナー)」となった。2位は「宅地建物取引士」、3位は「社会保険労務士」、4位は「行政書士」と続く。同調査では『FPはさまざまな業界で需要が高いだけでなく、さらに経験を十分に積めば独立起業ができることから、将来的にも活躍が期待できる資格』(資格Times)と解説されている。
起業に向けて、これらの資格を取得できれば、有利になることもあるかもしれない。
しかし、実際に士業で独立した方に話を聞くと、「資格を取るだけでは飯が食えない」という声が多い。例えばある社会保険労務士は、独立しても顧客が獲得できず、来る日も来る日も飛び込み営業を繰り返して、数カ月目にようやく初めての顧客ができたと振り返る。資格試験は難関だが、顧客の獲得はまた別の難関であろう。
シニア世代の起業相談を数多く受けてきた片桐実央さん(銀座セカンドライフ代表取締役)は、『セミナー講師を務める』『小冊子を作る』『自分のホームページを作る』の3つは少なくとも行うべきことと話す。さらに、定年起業前には、資格者の会員組織に積極的に参加し、顔なじみを増やすことも大事だと続ける。
「異業種交流会などに参加して、他の士業の方とネットワークを作ると仕事を紹介してもらえることもあります」と片桐さんは話す。資格だけでは食えない。人的ネットワークを醸成することが大切ということだ。 (取材・構成 藤木俊明)