本記事では「少額開業」や「退職金に手をつけない起業スタイル」などについて紹介してきたが、大企業に長年勤務して、数億円単位の取引を経験してきた方には、大きな投資を伴わない小さなビジネス、つまり小商いということがピンと来ないかもしれない。
今年「55歳から小ビジネスで稼ぐ!教科書」(辰巳出版)を出版した銀座セカンドライフ代表取締役・片桐実央さんに「小ビジネス」についてお話を伺った。
片桐さんは、定年後の働き方には大きく分けて「再雇用」「再就職」「小ビジネス(起業)」の3種類があると話す。
「それぞれメリット、デメリットがありますが、小ビジネスのメリットは何と言っても自分の意志を最優先して働けることでしょう。仕事内容、収入規模、働くペースなどすべて自分の采配でコントロールできますから、やりがいを持って働けます」(片桐さん)
片桐さんは「ゆる起業」と呼んでいるが、費用、体力ともに最小限から始め、小さい規模の仕事をゆるやかに継続していくことが大事と続ける。片桐さんは7000人以上の起業相談に乗ってきたが、多くのシニアがそのようなスタイルで小ビジネスを始めているという。
ただし、最初から小ビジネス1本に絞るのではなく、再就職と小ビジネスを組み合わせるなど、柔軟に考えたらどうかということだ。
「再就職先に週3日出勤し、残りの2日は自分で起業した仕事にあてるといった働き方も考えられますね」
このスタイルだと、自分のやりがいも達成できる一方、一定の安定的な収入も望める上、帰属する場所があることで精神的にも安定するのではないかと片桐さんは話す。(取材・構成 藤木俊明)