白羽玲子(しらは・れいこ)さん(49)が出版社を退職・起業し、6年間手堅く経営してきた東京・台東区の珈琲焙煎所「焙煎処(ばいせんどころ)縁(えん)の木」。ここにも、コロナ禍は大きなダメージを与えた。やはり3月はまったく仕事にならなかったという。しかし、4月ごろからネット通販サイトを中心に、売り上げが徐々に回復してきたと話す。
「SNSでつながっている知り合いが買ってくれたのが大きな助けになりました」(白羽さん)
ステイホームを余儀なくされた知り合いたちが縁の木の通販サイトを利用してくれたという。確かに、1日家にいるとおいしいコーヒーが飲みたくなる。ここでもやはり白羽さんの人脈が助けになった。
また白羽さんは、コーヒー豆の抽出カスや売り物にならない欠点豆を地域の福祉作業所の人に集めてもらい、四国のメーカーに送って、鶏のふんと混合させて臭いを抑えた肥料を製造するというクラウドファンディングを成功させた。この肥料の販売は地元蔵前のプロジェクトとなる。
肥料は縁の木が販売していくので、むろんビジネスなのだが、学校でこの肥料を使ってもらえれば子供たちへの環境学習になると白羽さんは続ける。ご自身の障害を持つ息子さんの将来の仕事として珈琲焙煎所で起業したこともあり、白羽さんの関わる活動には「地域のため」「子供たちのため」「環境のため」にという複数の目的が自然に融合しているように見える。
「いろいろな選択肢を持つということが大事だと思うのです」
コロナ禍は災難ではあるがこれまでの生活を見直すきっかけにもなった。
「うちくらいの小規模であれば、これはある意味チャンスなんです」 (取材・構成 藤木俊明)