2014年版中小企業白書によると、シニア起業した人のうち23・1%が起業を断念しそうになった経験があるという。そしてシニア起業家が直面した課題で最も多かったという回答は「資金調達」(17・8%)ということだ。これは若者(13・8%)、女性(11・6%)のそれと比較して高い。
本来、シニア世代には、退職金や貯金など一定のストックがあり、起業資金に悩むことはなさそうに見えるが、この先何があるかわからない。ストックには手をつけないように自重しているということだろう。
それは、同白書で述べられている「起業の準備段階にある者が起業を断念しそうになった際の相談相手の有無」にも表れている。シニア世代は「はい(相談相手がいる)」が45・2%と、若者(78・3%)、女性(66・0%)に比べてすこぶる低く、相談相手が少ないことが見てとれる。
その相談相手にしても、シニア世代では「家族・親戚(しんせき)」の割合が42・4%と、若者(38・7%)、女性(33・3%)に比べて高い。若者や女性は、友人・知人や起業仲間、既に起業した先輩起業家にも相談しているようだが、シニア起業家は家族・親戚以外には、あまり相談していないのかもしれない。これらから推測するに、シニア起業家が「資金調達」に悩んで断念しそうになったという背景には、起業資金を退職金や貯金などから捻出しようと身の回りの人に相談して反対にあってしまったということがあるのではないか。
しかし、そこで立ち止まらず、相談相手を探せば日本金融公庫など政府系の金融機関がある。地域の自治体にも相談窓口はあるし、民間の起業相談窓口もある。現在、シニア起業にはいろいろな優遇措置もある。身の回りの人に限定せず、相談相手を広く探してみたい。 (取材・構成 藤木俊明)