平井靖さん(58)は、もともとコンピューターが好きで、大手通信企業のシステム開発などに携わっていました。新興のIT企業に転職してからは、事業全体を動かす立場になりました。転職先は新しい分野に積極的に事業を展開していく会社で、「起業マインド」にあふれた職場環境だったそうです。
「私も起業のことはずっと頭にありました。そこで、会社で新しい形の大学を立ち上げ、その運営が軌道に乗った2012年に退職しました。サラリーマンから起業家になるための準備期間を設けようと思ったのです」
その時期にひらめいたのが現在の事業である「エアメッセ」(http://www.airmesse.com/)です。これはバーチャルリアリティー技術を活用し、クラウド空間の中にリアルな展示会と同様のブースを作ることができるもので、疑似体験ができるとのことです。
「地方の中小企業が大都市の大規模展示会に出展するためは、大きな費用と人的負担がかかります。このエアメッセを利用してもらえれば、あまりコストをかけずに、地方からでも出展可能です」
平井さんの事業はさまざまなビジネスプランコンテストで入賞を重ね、順調なすべり出しのようです。
「起業を考えている方に伝えたいのは『準備が8割』ということです。準備の仕方で成功が決まるといっていいでしょう。私は退職してから2年間、起業家のマインドに変わるため、勉強会やセミナーなどで新しい人脈と触れ合いました。その準備期間が役に立ったと思います。定年になってから準備を始めるのでは遅いかもしれません」
もっと早く会社を出ればよかった、と平井さんは語っています。 (取材・構成 藤木俊明)