橘重行(たちばな・しげゆき)さん(68)は大手建材メーカーに入社後、シンガポールに赴任。現地会社の設立に関わり、社長に就任しました。1992年に帰国しましたが、自由に采配できたシンガポール時代とは違って、日本では不自由さを感じることが多く、もんもんと過ごしていたそうです。
「自分はもともと商売人の家の生まれです。定年までこんな風に過ごすなら自分で商売したい、と思ったのです」(橘さん)
橘さんは、44歳の時に退社してシンガポールに戻り、不動産投資、高性能窓製造、オフィスインテリアの設計施工などの事業を始めました。
その後、現地の建材メーカー時代の知り合いから相談を受け、2009年から「テクノフォルム バウテック ジャパン」の代表取締役となり、高断熱窓の開発と普及に努めています。
「日本では窓の結露に悩む家庭が多いですよね。しかし、欧州ではほとんど結露はありません。なぜなら、日本基準より高性能の高断熱ガラス・サッシが使われているからです」
橘さんは日本の窓の性能を国際基準並みに引き上げることにより、結露にとどまらず、ヒートショックやエネルギー問題など、さまざまな課題の解決に貢献できると言います。そのためには基準作りが不可欠で、行政への働きかけや啓発が必要と橘さんは考えました。そこで2015年に、一般社団法人「パッシブウィンドウジャパン」(https://www.facebook.com/pwj14/)を立ち上げ、代表理事に就任しました。
「自分のやりたいことをやらないでどうする、ってことですよね」と語る橘さんらの活動により、行政サイドにも動きが見られるとのことです。 (取材・構成 藤木俊明)