小倉美奈子さん(55)は、福島県伊達市の出身。神奈川県川崎市の病院でレクリエーションワーカーとして働いていました。「お年寄りと波長が合ったのでしょうか。とても楽しく6年半働きました」(小倉さん)
小倉さんは手芸が得意で、脳梗塞で利き手がまひした人でも手芸が楽しめる「メタリックデコレーション」を実用新案として登録、本も出版しました。ところが2011年、あの大震災によって、故郷のみならず東北全体が大きな被害を受けました。
「今まで故郷に何もしてこなかったという悔恨の気持ちもあって、すぐボランティアに出かけ炊き出しを始めたのです。それから鎮魂のための灯籠づくり、仮設住宅に住んでいる方への手芸教室など、活動を広げていきました」
小倉さんは地元、川崎と東北被災地の往復を続けたのですが、ボランティアでは続けられないという思いに至ります。「本当の復興のためには、ちゃんとお金をいただき、働いてくれた人たちにきちんとお金を払うシステムを作らないと活動が継続しないと考えました」復興のためにお金を回していく仕組みを作ろうと、小倉さんは一般社団法人の設立を選択し、2012年に一般社団法人ビー・オリーブを設立します。伊達市での養蚕事業への協力や、福島県飯舘村でのアトリエ運営など活動の幅が広がり、各自治体や復興庁からの仕事も請け負うようになりました。「働いてくれた人にちゃんとお金を支払い、喜んでいただけるのは本当にうれしいことです」
そして、今まで母親の活動に厳しい意見を持っていた娘さんが、スタッフとして手伝ってくれるようになったそうです。小倉さんの活動は、さらに広がっていきそうですね。 (取材・構成:藤木俊明)