長年、経理の仕事をしてきた男性(63)が、経理事務代行業で起業しようと考えました。他の会社の経理などの事務を請け負う仕事です。それまでのキャリアを生かせる一方、起業に当たってはいくつかコツがあります。今回は、事務代行業のコツとリスクについてお話しします。
ひと口に事務と言っても範囲は広く、経理に限らず、庶務、労務、総務、広報のほか、情報システムの管理や営業支援、採用代行なども含まれます。これらの事務作業はどんな会社にも必要なので、中小企業に「事務処理をアウトソーシング(外注)して、労力や人件費を削減しませんか」と営業すると、比較的仕事を取りやすいと言えます。
つまり、事務ができる方は手に職があるということ。起業して、すぐに売り上げを上げられる可能性が高いのです。
一方、難しい面もあります。まず事務代行で起業する人は多く、競合他社が多いので、価格競争が激しいこと。また、当然ながら、自社の事務を外注する依頼主にとっては、「任せて安心」と思えるだけの信頼が不可欠。請け負った仕事を正確に、迅速に行い、地道に信用を築いていくことが求められます。
また、価格競争に巻き込まれないためには、他社にはない付加価値のあるサービスが必要です。例えば、時間制にして1時間から仕事を請け負う、社会保険労務士や税理士らと提携し、より専門的な事務や相談もできる、といったことです。
事務処理自体は、ノウハウがあれば1人でも完結できますが、ある程度の量の仕事を受注し、スピード感を持って仕上げないと、十分な売り上げを上げることはできません。そのためには人を雇用するか、請け負った仕事を外部に再委託することも選択肢の一つです。あるいは、事務代行の仕事を他社に紹介し、紹介手数料をもらうという事業にする方法もあります。
男性はまず、以前勤めていた会社の顧問だった税理士の事務所から、定期的に経理業務の仕事を受注しました。また、新規顧客を獲得するため、中小企業の経営者が集まる交流会に頻繁に参加し、人脈を広げています。《