法人を設立すると登記事項証明書に氏名や住所といった個人情報が記載され、誰でも手数料を払えば、その情報を閲覧できるようになります。在職中に起業する場合、勤務先の会社との関係もあり、個人情報の公開を避けたいと考える人も多いです。登記事項証明書に関連し、定年前後での起業ならではの注意点をお伝えします。
法人の登記事項証明書とは、登記をした法人の概要が記載されている書類で、法務局で600円の手数料を払うと入手できます。会社を設立し、事業を開始すると、税務署や年金事務所などの各種届け出や、銀行などで法人口座を開設する場合などに、必要書類として提出を求められる書類です。会社の存在そのものを証明するほか、会社の概要が記載されているため、対外的な信用確保に役立ちます。
この登記事項証明書には経営者の個人情報が記載されます。氏名や住所の記載を避けたい場合、役員にはならずに株主になる人がいます。登記事項証明書には、役員は氏名が、代表取締役は氏名と自宅住所が記載される一方、株主の記載はないからです。
また、本店所在地も登記事項証明書に記載されます。自宅を本店所在地にしている場合、情報が名簿業者などに売買され、営業活動のために自宅を訪問される場合があります。不安なら、自宅とは別の事務所やレンタルオフィスを本店にしましょう。
登記事項証明書は、一般的には登記簿謄本と呼ばれていますが、厳密には異なります。現在、法務局では登記事項をコンピューターで管理し、従来の登記簿謄本に代えて、登記事項証書を交付しています。登記簿謄本は、従前の紙で管理していた時代の「登記簿」の全部の写しのことで、時代の名残です。
登記事項証明書には、いくつか種類ありますが、今回は、そのうちの2つを紹介します。
(1)現在事項証明書 取得する時点で、会社の商号(名称)、本店(主たる事務所)、取締役や代表取締役など、現時点で効力があるものが記載されています。
(2)履歴事項証明書 現在事項証明書の記載事項に加えて、過去の変更履歴が記載されます。例えば、本店移転があった場合に新住所とともに旧住所を下線上に記載されます。税務署や銀行などの金融機関に提出を求められる場合は、この履歴事項証明書を提出すれば問題ありません。
最後に登記事項の変更に伴う注意点です。勤務先を退職し代表取締役に就任した場合は、2週間以内に法務局へ記載事項の変更手続きをしなければなりません。そして、変更には数万円の登録免許税が発生します。
登記事項証明書は、会社名と本店所在地を知っていれば、誰でも取得できる公開書類です。記載され公開される項目を事前に把握した上で、法人登記しましょう。