新年を迎え、今年1年の目標を定めた方も多いでしょう。今回は「経験を生かした起業」の進め方についてです。
セカンドライフの選択肢として、定年前後での起業を選んだ場合、今までの経験や人脈を生かした事業を始めるケースが多いです。創業支援を行う政府系金融、日本政策金融公庫(東京都千代田区)が、平成24年末に発表したシニア起業家の開業に関する実態調査によると、経験のある業種で起業するケースが全体の8割近くに上ります。そのほうが未経験の事業に挑戦するよりも成功する確率が高くなるからです。
私は、起業セミナーで「3つの円」についてお話をしています。「やりたいこと」「得意なこと、できること」「お金になること(市場性)」をそれぞれ書き、3つの円が重なった分野で事業を始めると成功する確率が高くなります。
前職で培った実務の豊富な経験とノウハウ、スキル、人脈などは、一朝一夕には身につかない大切な資産です。その資産を「得意なこと、できること」として生かすことができれば、成功へとつながります。
ただし、「経験を生かす起業」の場合、気を付けたいこともあります。それは前職の会社との関係です。前職の会社絡みで仕事を請け負うと、それまでの経験や人脈を活用できます。また、起業の初期段階でも確実な売り上げになるため、安心感も得られるでしょう。
しかし、そのまま継続して仕事を依頼されるかどうかは分かりません。前職での付き合い上、儀礼的な意味合いで、起業当初だけ仕事を発注されるというケースもありえるからです。また、前職の延長線上の仕事ばかりだと、過去のしがらみから、自身のやりがいや仕事を楽しむという目的は達成できないかもしれません。
そこでお勧めするのは、まず前職の延長線で、自信を持って「できること」で起業し、次第に「やりたい」仕事に移行していくという流れです。「やりたい」と思ったからといって、すぐに実現できるわけではありません。「やりたい」仕事を起業当初から行おうとすると、売り上げに結びつかず精神的につらくなる人もいます。
一方、「やりたいこと」がはっきりしないという方も多いです。起業はしたいけど、何がしたいのかはっきりしない方も多くいます。その場合は焦らず時間をかけて見つけてください。まずは「できること」で、目的の収入が得られるぐらいまで事業を成長させましょう。その後は、徐々に「やりたいこと」に移行すると、経営的にも精神的にも安定します。
セカンドライフでの起業の醍醐味(だいごみ)は、自身の経験を生かし、無理をせず、自身のペースで仕事を「楽しむ」ことにあるのではないでしょうか。