中小企業向けの経営コンサルタント事業を興したい男性(57)がいました。しかし、起業後の収入がどれくらいになるか見通せないため、会社の立ち上げに踏み切れずにいました。今回は、起業に際しての収入の目安についてお伝えします。
まず、50、60代のシニア起業家に、事業の立ち上げに踏み切った理由を聞いてみました。すると、「自分の裁量で仕事がしたかった」「年齢や性別に関係なく働くことができるから」「社会に貢献したかった」などと答える割合が比較的高いことが分かります。つまり、より高い収入を目指して起業するわけではなく、企業を定年退職した後も働き続けたいと考え、生きがいづくりのため起業している人が多いということです。
そうは言っても、収入がゼロというのでは困りますよね。私が相談を受けた際には、起業して3年以内は「起業後の年商」が「前職の年収」と等しくなるように計画を立ててもらっています。これは仕入れや設備投資が必要な業種ではなく、あまり資金がかからないコンサルタントなどの業種の場合です。
例えば、前職で会社から年600万円の給与を受けていた人は、起業後の自社の売り上げとして600万円を確保してもらいたいのです。そこから交通費や広告宣伝費、通信費などの諸経費がかかり、それらを差し引いた額が収入となります。もちろん、現役時代より収入は減ることになりますが、生活を維持できたうえで、やりがいや満足度を現役の頃より感じられれば成功といえるでしょう。
起業後の年商が、前職の年収の水準に達した人は、さらに売り上げを伸ばしていけるでしょう。しかし、1人で起業して得られる売り上げは上限があります。例えば、コンサルタント業による売り上げは年商3000万円ほどが限界でしょう。その額に達したとき、経営者は2つのタイプに分けられます。人を雇用してさらに売り上げを伸ばそうとするのか、あるいは仕事を調整して自分でやれる範囲に仕事を制限するのか…。
どちらが正解というわけではありません。起業して何を目指すのかも自分で決めることができるのが、起業の醍醐味(だいごみ)といえるでしょう。
男性は起業に踏み切り、初年度で前職の年収水準の年商を達成しました。仕事も軌道に乗り、妻に手伝ってもらうつもりだそうです。