今回は横浜で開催される「横浜ビジネスグランプリ」のファイナリストになった脇坂健一郎さんを紹介します。脇坂さんはシステム開発会社に在職中の2019年4月、会社公認で株式会社エフィシエントを38歳で設立。20年には正式に独立し仲間数名と本格的に事業を始めました。
新会社の事業内容は受託システムと自社プロダクトの開発です。脇坂さんは前職から経験のある営業を主に担当し、開発は仲間のエンジニアに任せています。受託システムでは、特に製造業向けにあらゆるモノがネットにつながるIoTや人工知能(AI)を活用した業務課題の解決に取り組んでいます。
脇坂さんは仕事で「話す」機会は数多くあるものの、「話し方」を改善できる環境がないことに問題意識を持っていました。そこで自社プロダクトでは、AIによる動画解析を使って「話し方」を改善するアプリ「Steach」を開発しました。
話すシーンをスマホで撮影すると、AIが笑顔や声の大きさ、話す速さ、姿勢、視線など主観では分かりづらい点を定量的に評価してくれます。何度でもやり直して納得いくまで話し方の練習ができます。また企業の教育担当者が話し方の指導に役立てるなど、研修や面接練習など幅広い利用が見込めます。
脇坂さんが起業に興味を持ったのは30歳の時です。まず知見を増やすために、働きながら大学院で経営を学びました。更に仕事のスキルと経験値を高めるために、当時勤めていた大手の会社からベンチャー企業へ転職しました。
実際の起業につながったのは、「横浜ビジネスグランプリ」で、ファイナリストとして登壇したことだそうです。このプレゼンで世の中に新しいことを提供する喜びや起業への想いを強くしました。
脇坂さんが起業後に強く意識するようになったのは、お金の心配だそうです。現在の業務は、開発から資金回収までに時間がかかる分野でもあります。しっかりとした事業計画を立てないと会社を継続できません。
また脇坂さんが起業後に強く感じたことが「主体性がある人と仕事をすることが重要だ」ということです。想像通りに物事が進み、懸念も全くないという状況はまれなことです。新型コロナウイルス感染のようなことも数年前には誰も想像がつかない大きな外部環境の変化にも直面することがあります。こういった時には資金面や経営で自分の意思や判断に基づいて行動できる余地のある仲間や取引先の協力が欠かせません。こうした外部の人たちとの関係構築が自社を安定的に成長させるための要素の1つなのです。
脇坂さんは、今でも横浜市の公的な支援を積極的に活用するなど、行政とのつながりも大切にしています。社内外問わず、人とのつながりを大事にして信頼関係を作りながら、現状に満足することなく新しいサービスを生み出す会社だと認識してもらえるよう、日々活動していきたいと抱負を語ってくれました。
(銀座セカンドライフ社長 片桐実央)