今回は喫煙所事業を行いながら、投票型喫煙所「ASK THE TOBACCO」というユニークな試みで注目を集める、コソド(東京・千代田)の山下悟郎社長(40)をご紹介します。
「人生に大事なのは、愛か金か」など2択の設問を記載した、つい使いたくなる仕組みを取り入れた投票箱を兼ねた吸い殻入れに、吸い殻を捨ててもらうことでどちらの回答が多いかの結果がわかる喫煙所があります。「楽しみながら」たばこのポイ捨てを減らすためのこの試みは、渋谷センター街のポイ捨て率が約90%減るなどしていて、さら活動の場を広げています。
24歳と若くして起業した山下さんは数社を興して成功させたのちに、2019年にコソドを始めました。それまでは「ニッチ市場に絞り、この領域でどう確実に勝つか」に主眼を置いてきましたが、今回は今までに手掛けたことがなかった「社会課題の解決」を軸にマネタイズよりも興味・関心と面白さを突き詰めることを目指しました。
20年の改正健康増進法の全面施行で、喫煙できる場所が喫煙者数に対し圧倒的に少なくなりました。ゴミやポイ捨て問題の加速が有識者から指摘されていたことに山下さんは目を向けました。問題解決には「喫煙所を増やすこと」と考え活動していきます。
ポイ捨ては「どこで起きているか誰も知らなかったこと」が大きな問題の1つと山下さんは言います。そこでまず参加型の「ポイ捨て図鑑プロジェクト」を開始し、参加者に楽しんでもらいながら街のどのエリアにポイ捨てが多いかを可視化しました。
そしてポイ捨ての多いエリアへの喫煙所設置に向け動き出しますが、喫煙禁止の道路で設置ができなかったり、賃料が高くあまりに費用対効果が悪かったりしてなかなか実現に至りませんでした。解決策として導き出したのが私有地(私道)の利用で、ポイ捨てが多い地域で煙が周辺に迷惑をかけない場所のオーナー様に掛け合い、協力を得て開設にこぎつけました。
行動経済学にもとづいた投票型灰皿をベースに、究極の2択を問う「ASK THE TOBACCO」も設置しました。設置場所、アイデアとともに計算し尽されたこの活動は、各所でポイ捨てを圧倒的に減少させることに成功し注目を集めました。
しかし、事業開始当初は「とにかくお金がどんどん出ていったことが大変」だったそうです。実証実験は喫煙所の設置とポイ捨てが減るかどうかの2種類を実施していました。これらの実験で効果が出るかどうかを検証していました。支出を考慮するのは二の次で、支出が多い時期が長く続いたそうです。
そんな経験もした山下さんは「『7、8割』などと分かりやすくポイ捨てが減少するととてもうれしい」といいます。いま、この活動を全国に広げていく中で行政や政治家ともディスカッションする機会も増えたといいます。
ゴミをなくすための建設的なモデルになれていることを実感し、非喫煙者・喫煙者が互いの好きなものを認め合い、共存できる社会を作れていることに意義を感じていると語ります。
最後に起業を考えている方へのメッセージを伺うと、起業したいと思ったらすぐしてもいいと思う、とさらっと仰います。またお話しからは周囲の状況も見ながら事業分野を定め、自身の立ち位置と取り組む課題を明確に設定することの大切さを改めて認識させられます。
(銀座セカンドライフ社長 片桐実央)