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日経MJ・ゆる起業のススメ

2020年05月22日

【50歳からのゆる起業】品質・予算、バランス考え提案

 田澤正樹さんは、現在50歳。今から4年前に「ジャンピース」(横浜市西区)という株式会社を立ち上げ、椅子やテーブル、ソファを主とした業務用家具の卸販売を手掛けています。社名の由来には「JUMP」「PEACE」「椅子」の意味が含まれているそうです。


 田澤さんはご自身の仕事について、「分かりやすく言えば『商業空間の椅子屋さん』。椅子やテーブルといった脚つきの家具が専門です」と説明してくれました。


 田澤さんは、20代のときに旅先で見つけた一脚の美しい椅子に魅了され、家具業界に就職しました。その後、椅子の魅力を突き詰めるうちに、起業することになったそうです。


 起業時の苦労をお聞きしましたが、ご自身では「あまり感じていない」と話していました。


 「登記をしたり書類を出したりするたびに、会社に命を吹き込んでいるとの感覚がありました」と振り返ります。仕入れ先や得意先を開拓するたびに「この会社を育てていくぞ、との思いがあふれてきました」と、語ってくれました。


 売り上げが思うように上がらないストレスや悩みよりも、仕事が少しずつ決まっていくことに「素晴らしい仕事をさせてもらえる自分は運がよい」と感じていたそうです。


 仕事を手掛けるときは、案件ごとに家具の用途目的や意匠、使用環境、予算などをヒアリングします。そのうえで調和のとれたデザインや品質、強度耐性、メンテナンス性、コストパフォーマンスなどを考慮して提案します。もちろん簡単なことではありません。このバランスを完璧にコントロールできたとき、最もやりがいを感じるそうです。


 営業は、どのような気持ちで臨まれているのでしょうか。当初は「100件声を掛け、1件でも受注が取れたらよい」と考えていたそうです。


 なかにはメールを見ない方もいます。以前お世話になった方々に「起業したので何かあればお声がけください」とあいさつがわりの電話もかけました。「何事も焦らず、コツコツ続けるうちに結果が出てくる」と語っていました。


 もっとも会社を経営するなかで、資金繰りの苦労もありました。仕事の内容から仕入れ販売になりますので、どうしても前金制が多くなります。さらに業務用家具は高額になります。このため大型案件が決まったときは、銀行から融資を受ける必要がありました。


 手持ち資金が少ない中での起業でしたので、銀行に頻繁に相談し、資金繰りについてアドバイスを受けたそうです。銀行との信頼関係を築きながら、業績は少しずつ上向いていきました。今年になって、ようやく山を一つ越えたと実感できるようになったといいます。


 これから起業する人へのメッセージを聞くと、「自分が望む、幸せになれる仕事をイメージしてください。たくさんシミュレーションしてほしいです。良いイメージを持つことで、良い現実が近づくと感じています」と答えてくれました。


 起業すれば、仕事と人生を自分の責任でデザインすることができます。納得がいく人生を送れるようになることが、起業の醍醐味だとおっしゃっていました。(銀座セカンドライフ代表 片桐実史)

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