小川拓也さんは、20年以上にわたって流通・消費財業界に携わった後、50代で日本初のキャッシュバックアプリ、「CASHb(キャッシュビー)」を開発し、起業しました。
小川さんは、消費財メーカーが消費者に直接訴求するツールが限られている現状に「ずっと問題だ」と感じてきたそうです。消費財メーカーが消費者に手軽にアプローチして商品を認識してもらい、商品を購入してもらえるツールが必要だとの思いがありました。そこで始めたのがキャッシュビーだったのです。
キャッシュビーは、2016年11月にサービスを開始しました。消費者が食品や日用品を買うと、「CB」と呼ばれるポイントがたまり、そのCBを通じて現金化できるアプリのサービスです。
具体的には消費者が、「キャッシュビー」のアプリで商品の動画広告を見たり、アンケートに回答したりした後に商品を購入するとCBが発行されます。商品を実際に購入したかは、利用者が撮影したレシートの写真と商品のバーコードデータを送ってもらい確認します。
小川さんの会社は、食品・飲料・嗜好品・化粧品・トイレタリーメーカーの大企業から広告費をもらって、アプリを運営しています。最近はネットとリアルをつなぐO2O(オンライン・トゥ・オフライン)のダイレクトマーケティングプラットホームで様々な企画ができるため、大手食品メーカーを中心に対象商品が増えているそうです。
サービス実現には、多くの困難があったそうです。キャッシュビーと同じサービスは、アメリカやヨーロッパでは既にビジネスモデルとして確立していたそうです。日本向けに改良するため、「前職の時からアメリカに渡って、情報収集や人脈を広げてきました」といいます。
創業時は資金面の苦労も絶えませんでした。日本初のサービスでもあり、理解されるまで時間がかかったそうです。
その後、局面が変わりました。経営方針を柔軟に変えることにして、18年に楽天銀行と提携しました。食品や流通業界に新サービスを提案しても、「なかなか受け入れてもらえない」日々が続きましたが、楽天銀行との提携をきっかけに取引先の反応が変わり始めたそうです。
これから力を入れるポイントを伺うと、「会員獲得とクライアント獲得のスピードアップ」と答えてくれました。
「現在、約35万人の会員がいます。楽天銀行と築いた事業連携をさらに拡大するため、最優先で大手の連携先を探したい」といいます。広告主を獲得するスピードを上げるため、食品卸業の元営業責任者を顧問として迎えるそうです。「もっとキャッシュビーを広げるため尽力したい」と抱負を語ってくれました。
(銀座セカンドライフ代表 片桐実史)