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日経MJ・ゆる起業のススメ

2023年12月08日

【ゆる起業のススメ】小売店の余剰食材、地元飲食店に

 今回は地域に根差して新しいネットワークを構築し、食品ロスの削減に取り組んでいるグロバース(横浜市)の長谷川哲雄社長(55)に話を伺いました。


 長谷川社長は30年続けた会社員生活のなかで主に営業や営業企画として、教育、保険、通信、ITなど様々な業界を経験してきました。そんな会社員生活を送ってきた中で「食に関わるビジネスをしてみたい」「地域に貢献したい」という考えが芽生え、次第に大きくなりました。2021年にグロバースを設立した時は、これが最後の仕事になるかもしれないとの思いだったそうです。


 事業の根幹は食品ロス削減と食分野における地域貢献です。初めは事業拠点がある横浜市内で事業を始めました。


 生産者や小売店で余った食材を近隣地域に流通させる仕組みです。飲食店が料理として使い、地域の消費者に食べてもらいます。余剰食材は種類や数量が日々変わります。こうした事情に理解を示してくれる取引先を開拓することなどが課題としてありますが、一歩一歩前進しています。


 次にサイズや形がよくないなどの理由で捨てられてしまう規格外野菜を活用した取り組みです。乾燥野菜を使った「YOKOHAMA Dry」プロジェクトをスタートさせました。横浜市内の農家から提供される規格外野菜を加工してミールキットなどとして活用し消費者に届けています。


 商品は横浜市の干し野菜研究家である澤井香予さんが開発。野菜の加工・袋詰めなどは同市内にある福祉事業所が担っています。このおかげで同事業所は仕事を確保することができます。「農福連携」を実現したプロジェクトとして22年から販売が始まりました。


  販売価格は、比較的少量での生産のため割高です。しかし、SDGsやエシカル消費に関心がある方を対象に「食品ロス削減」「地産地消」「おいしく健康的な食材」などをキーワードにして販売しています。


 最近では同社の事業の認知度が向上してきたこともあり、神奈川県内で事業を広げるというのが目標の1つだということです。YOKOHAMA Dryプロジェクトを起点として食品ロス削減の機運を高め、事業をさらに発展させていきたいと考えています。


 苦労した点は法人設立や税金・社会保険の仕組みなどを理解して事業を進めることでした。公的な起業支援機関をはじめとして専門機関のもとに足を運んで相談したそうです。昨今は一人で起業される方が増えましたが、全てのことを一人でこなす必要はありません。民間の中にも様々な起業支援サービスがあります。自身の置かれた環境などを考慮に入れた上で上手に利用してほしいです。


  起業を考える方へのメッセージとしては、一人で会社を興すことは責任を伴いますが、やりたいことができるということです。色々な方とつながれることで発見もあります。そしてまた新たな取り組みが始まるところが魅力だと話していました。


(銀座セカンドライフ社長 片桐実央)

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