起業するのに、一から自分で事業を立ち上げる人ばかりではありません。人の事業を引き継いで起業する人も一定数いらっしゃいます。日本の後継者不足を解消するためにも事業引き継ぎは大切です。
事業引き継ぎでは企業がこれまで培ってきたさまざまな資産(人・モノ・カネ・知的財産)を買い取ります。既にある事業を引き継ぐので楽に思えますが、一方で大変なことも。例えば引き継いでみたら売り上げが激減したとか、トラブルもそのまま引き継いでしまった、などということもあります。
ここで事業を上手に引き継いだ方をご紹介します。高橋俊哉さん(65)は大手印刷会社で法人営業としてキャリアを積んできました。しかし、BtoBの仕事では、エンドユーザーの喜ぶ顔がなかなか見えません。いつかはエンドユーザーに喜んでもらえる仕事をしたいと考え、奥様と「何か一緒にやれればいいね」と常々話し合われていたとのことです。
2016年、高橋さんは当社のシニア起業スクールに参加して、「少子化は大きな問題で今後結婚をサポートする事業がますます求められるだろう」と結婚情報サービスの事業計画を立てました。
早期退職した高橋さんは、奥さまと一緒にやるなら事業を大きくしたいと考え、法人格や店舗、積み上げたネットワーク等を、実績のある企業から事業を引き継げないかと考えたのです。そこで高橋さんはスクールで紹介された神奈川県の「事業引継ぎ支援センター」に相談しました。
事業引継ぎ支援センターには、後継者のいない起業家と起業を志す人をマッチングする「後継者バンク」があります。希望条件が合致したら両者の引き合わせのための面談の機会を設定してもらえますが、このサービスは無料で受けられます。
高橋さんはなかなか案件が見つからなかったのですが、支援センター担当者の尽力により、?年間結婚相談業を営んできたパートナー(神奈川県大和市)の事業を承継することが決まり、円滑にバトンを引き継ぎました。
高橋さんは事業承継のために一定の金額を投資しました。しかし、実際に引き継いでみると、期待したネットワークがなかったなど見込み違いのこともあったそうです。しかし、大きな財産が残されていたといいます。
「ある程度のリスクは覚悟済み。この事業は何と言っても経験豊かなカウンセラーが生命線です。現在のような人手不足の状況下で、優秀な人的資産を引き継げたことは本当に大きかったですね」(高橋さん)
結婚相談業は、元手はそんなにかかりませんが、お客さまを導くカウンセラーの能力が大事です。何にもないところから会社を立ち上げる苦労を思えば、経験豊かなスタッフ、そして店舗やお客さんなどの地盤を引き継げたのはよかったということです。
今後はパートナーが積み上げてきた事業を基に、SNS(交流サイト)などを活用してより事業を広げていくそうです。(銀座セカンドライフ社長片桐実央)