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日経MJ・ゆる起業のススメ

2019年07月26日

【50歳からのゆる起業】常連と紹介客を大切に

 清水次朗さん(71)は64歳で食品会社を退職した後、今までの経験を生かそうと「まいど屋」という屋号で個人宅向けの食品宅配の仕事を開業しました。


 食品の宅配サービスは、まず清水さんが豊洲市場や築地市場などに出向き新鮮な食材を選びます。その食材の写真や料金を掲載したチラシを作成し、新聞に折り込みます。チラシは、若いデザイナーに依頼して、どうやったらおいしさが伝わるか話し合いながら、また旬の食材をなるべく取り入れるよう一緒に作り上げました。


 そのチラシを見た方から、電話やFAXの注文を受けて、ご自宅まで食材を電車や車で運ぶというサービスです。清水さんは、家業の仕出し料理店で働いていたので、魚や野菜のおいしい調理法などをよくご存じで、アドバイスしつつお届けしている点が好評です。

 開業直後はお客さんからいろいろ叱られたこともあったけれど、清水さんは利幅を抑えていいものを届けようと苦心した結果、高齢者を中心としたお客さんがついてきて、売り上げも増えたそうです。


 2013年、清水さんが65歳の時、法人化を決めてJP企画販売サービス(東京・中央)を設立しました。「やはり仕入れする時は法人でないと信用力がないですからね」(清水さん)。家族に会社設立を相談したところ、「借金はしないで」と奥さんに言われたものの、あとはみんな応援してくれたそうです。


 また法人化のタイミングで、清水さんの「まいど屋」というサービス名も、特許庁に商標登録しました。新しく商品やサービスの名前やロゴを考えたら、商標登録を検討した方が良いでしょう。登録済の商標をインターネット上の「特許情報プラットフォーム(J―PlatPat)」で検索することもできます。登録まではしなくても、他人の商標権を侵害していないかは確認したほうが良いでしょう。


 さらに清水さんのように、50代、60代で株式会社を設立する方の多くは、1人で起業する方が多いです。自分自身が、株主であり代表取締役にもなるという会社組織なので、自由度が高いです。また、資本金も1円からでよくなりましたので、昔のように資本金は最低1000万必要で、役員は3人以上でなければならないという法律ではなくなりました。


 会社組織にしたものの、仕入れなどはやはり清水さん1人でこなします。築地に同行させていただきましたが、はつらつと歩かれて、とてもお年を感じさせません。顔なじみのお店に寄っていろいろ品定めをして、「これ大きいニンニクだね」と話したり、注文を出されたりしています。


 販売先の開拓については、「無理に広げることはしません」といいます。固定客とそのご紹介のお客さんを大切にしていくそうです。利幅も最低限にしようと決めているそうです。「もちろん自分も商売をやってきた人間ですから、チャンスがあればビジネスを考えますが、それよりも『ゆる起業』でいきたいですね」と笑われました。(銀座セカンドライフ社長 片桐実央)

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