私がシニア起業をサポートしている人の中には、「自分が習得してきた技を教えること」を事業化したいという方も多くいらっしゃいます。趣味で習っていたプリザーブドフラワーを教える側に回り、その分野で起業した会員、カンボジアの踊りにほれ込み、現地に1年半ほど留学して日本で教えてよいという許可を得て帰国・起業した会員など多士済々です。
今回ご紹介する大沼千恵美さん(50)は、お箏(琴)の先生で、大手キャビンアテンダント養成スクールで講師もつとめられていました。日本人の「おもてなしの心」を根本に、身だしなみや立ち居振る舞い、話し方、メイク、接遇マナーなどを教えてこられたそうです。
そうした内容を「大沼メソッド」としてまとめ、今後は企業や官公庁の研修に生かしていきたいと考え、「桜箏(さくらこと)スクール」を設立されました。スクールと名付けたのは、世界に誇れる「なでしこ」「サムライ」を育成する学校にしたいという思いからです。
「家族が日本の伝統芸能をたしなんでいたため、わたくしは幼少のころから立ち居振る舞いや所作について厳しくしつけられてきました。現在は、外資系企業の管理職候補、官公庁の職員、大病院のスタッフなどに身だしなみや言葉遣い、他者への気配りなどマナーに関することをお教えしております。マナーというのはコミュニケーション・ツールのひとつで、とても大切なものです」(大沼さん)
大沼さんによると、長年組織に守られてきた人ほど、独立して社会に出るときには、身だしなみや立ち居振る舞いなどに注意したほうがよいそうです。確かに、会社に守られ、マナーについて誰からも指摘されなかった人は多いと思います。
「企業経営者の方からのご相談も多いですね。どんなに内面が素晴らしくても、それにふさわしい身だしなみや振る舞いができないと、内面は相手に伝わりません」(大沼さん)
定年起業を考える方も、ご自分のマナーを今一度、見直されてみてはいかがでしょうか。(取材・構成 藤木俊明)