企業に長く勤められてきた方は、豊富な実務経験や専門知識があります。人的ネットワークもお持ちです。そういった方向けに、経済産業省関東経済産業局が「マネジメントメンター登録制度」を設けています。同制度は、定年前後の専門家が「メンター」として、中小企業の経営課題解決を支援するための制度です。
今回ご紹介する古舘博義さん(64)は、このマネジメントメンターに打って付けの人でした。古舘さんはソニーに長年勤務され、家電、放送、通信、インターネットサービスの新規事業で、さまざまな経験を積まれた方です。
多忙で家族との会話もままならなかったそうですが、ソニーに在職中、早稲田大学の非常勤講師に派遣され学生たちと触れ合う機会を得ました。古舘さんは学生たちの自由な発想に驚き、自分にはない視点だと感じるようになったそうです。
そんななか、次男が流通販促の企画・制作に携わっていたことがきっかけで、互いの強みを生かし、一緒に会社をつくろうという話が持ち上がりました。当社(銀座セカンドライフ)を訪れた古舘さんは、私(片桐)と相談のうえ、経営コンサルタント会社の「株式会社イーズ・グループ」を立ち上げました。
起業後、私は古舘さんに前述の「マネジメントメンター制度」を紹介しました。古舘さんは早速登録し、企業の支援を開始。顧問契約も締結されました。
「日本にはユニークな技術、製品、サービスを開発している企業がたくさんあります。それらの企業の経営課題の解決やイノベーションをお手伝いするのは、やりがいがあります。また、会社の創業と経営を通じて息子との接点が増え、創造的なアイデアを出すのが楽しみになってきました」と古舘さんは話しています。
古舘さんはソニー在職中から邦楽などの作曲家や演奏家を支援され、現在では息子さんも協力されています。息子さんは流通販促の企画・制作に忙しい毎日ですが、お父さんとは同じ会社の仲間です。自分の子供と一緒に仕事をして、互いに啓発される-そんな定年起業も、とても素敵だと思います。(取材・構成 藤木俊明)