若宮正子さん(84)は世界最高齢のプログラマーであり、高齢者向けのアプリを開発したことで米国アップル社ティム・クックCEOに招かれたことで知られる。そんな若宮さんはもともと銀行に勤めていたが、定年近くなってパソコンを習得、パソコン通信上の活動で知られる存在となった。
そして地元の主婦に自宅でパソコンを教え始めたのだが、そこでExcelを使ってデザインする「エクセルアート」を編み出した。枠を塗りつぶしたりグラデーションをかけたりして、美しいもよう作りを楽しむ。取材時にはエクセルアートでデザインした洋服を持ってきていただいた。
「女性は編み物とか好きでしょう。Excelの難しい機能じゃなくて、こういう楽しみ方から入るのがいいと思います」(若宮さん)
若宮さんはパソコンやインターネットが楽しくて好きなことをしてきただけと笑うが、政府の委員を務めたり、講演会や執筆などにも精力的に活動し、現在は年金の他に青色申告をするほどの収入があると言う。
「でもお金が目的じゃありません。主に高齢者のデジタル活用を推進するNPOの支援に使わせていただいています」
若宮さんは電子国家として知られるエストニアに興味を持ち、同地に赴いてシニア世代のデジタルについての意識調査を行った。その結果は12月にも公表するとのことだ。また、同月には著書「老いてこそデジタルを」(1万年堂出版)の出版も控えている。
起業という形にこだわらず、好きなことをやりながら自然に収入も得ている若宮さんの生き方に共鳴する人も多いのではないか。
若宮さんのように自然体で定年後を楽しく過ごすためにはどう過ごせばいいかと聞くと「まず地元を大切にすることから」と言う。ボランティアなどでもいいから人とのつながりを作ることと話した。(取材・構成 藤木俊明)