新卒以来同じ企業に勤める会社員には、定年後にフリーランスという立場で仕事をするイメージはつきにくいだろう。そもそも仕事を獲得できるものなのだろうか?今回、60歳を過ぎてもクリエーティブのプロとして現場で活躍を続けている武蔵浩太さん(仮名)を夕刊フジ定年起業応援サロンにお招きし、話を伺った。
武蔵さんは40代半ばで広告代理店を退職、個人事業主として独立する。
「クリエイティビティーの欠如した仕事が増えて消耗するばかりでした」(武蔵さん)
自宅を仕事場にし、プロ仕様のパソコン2台、業務用スキャナー、大判出力可能なプリンターなどをそろえるのに300万円ほどかかったという。しかしその投資は実を結び、フリーランスとなってから61歳になる現在まで安定的に仕事を確保できていると語る。だがクリエーティブの仕事は若い人というイメージだ。
「確かに広告制作の世界は若くフレッシュな感性が重用される傾向があります。しかし若い人が請けづらい仕事もあります」 クリエーティブの現場には人生経験が必要な仕事も少なくないという。たとえば「社長取材」だ。武蔵さんは年に70社から80社の社長にインタビューし、企業パンフレットやウェブサイトを制作する。若いインタビュアーは年の離れた社長から本音を引き出しづらい。
また、武蔵さんが安定的に受注しているのが「株主総会」のコンテンツ制作だ。これも、若い人より年季の入ったベテラン担当者が求められる傾向があり、武蔵さんが指名される。
次回はフリーランスとしての苦労などを紹介したい。(取材 構成 藤木俊明)