定年後の働き方のきっかけとして注目される新現役交流会。会で中小企業と新現役(会社で培った知識や経験を中小企業に提供するシニア人材)をマッチングさせる重要なプレーヤーが金融機関だ。今回は「たましん新現役交流会」を主催する多摩信用金庫地域連携支援部の鈴木智也さんと筧森(かけひ・しん)さんにお話を伺った。
多摩信用金庫は2013年から6回の交流会を開催し、中小企業とシニア人材の出会いの場を作っている。中小企業からは、販路開拓、生産管理、経営戦略、経理、IT活用などの助言が求められる。そういったノウハウ提供のために、シニア人材が中小企業の中に入ることが求められている。
鈴木さんは1つの事例を挙げる。大手企業との取引において生産体制と品質管理を求められた中小企業が新現役交流会に参加し、マッチングされた50代半ばの新現役が顧問契約を結び、現在も活躍しているという。
「ほんとうに来ていただいてありがたいと経営者の方は感謝しています。ウィンウィンですよね」(鈴木さん)
その経営者は毎年新現役交流会に参加するようになったとのことだ。
もう1つの事例として、企業からすごくニッチな分野での要望があり、なかなか新現役が集まらなかったが、ある70歳近い新現役が手を挙げ、二次面談に向かった先の工場で即座に現場の問題点を指摘した。「ぜひこの人を」と合意し、業務委託契約を結んで週4日程度今も働いているそうだ。
「中小企業は人材採用に苦しんでいますが、採用だけではなく、『人材活用』にも目を向けていただきたいですね。そのために新現役交流会を活用していただきたいです」
定年後の働き方を模索するシニア世代はもちろんだが、中小企業も『人材活用』の視点で、新現役交流会を活用する方法がありそうだ。 (取材・構成 藤木俊明)