定年後も仕事を続けたいと考える人は、やはり定年前に一定の準備が必要だろう。現在、一円マネジメント企画合同会社の代表を務める一円正之(いちえん・まさゆき)さん(66)は、定年退職1年前の65歳から準備を始めた。「商工会議所に相談すると、神奈川県の起業スクールを紹介され、銀座セカンドライフの片桐実央社長からいろいろ教えてもらいました」(一円さん)
その頃はまだ化工機メーカーの社員で、起業の意志が固まっていたわけではないと述べる。「今までの会社生活とはまったく違いますからね。不安で決められませんでした。でも66歳になって仕事が何もないという状態だけは避けたかった」
一円さんは川崎のアントレサロンを契約し、休みの日や有給を使って通い、今後のことをプランニングしたという。
「起業スクールで、自分の経験を生かして起業するのがいいといわれ、中小企業の販路開拓や人材開発をお手伝いしていければと思ったのです」
たとえば中小機械メーカーの販路開拓ニーズは高い。しかし顧客開発には専門的な機械知識が求められる。そこで自分の知見や人脈が役立つと考えたのだ。
定年退職と同時の活動開始を決意した一円さんは在職中に法人を立ち上げておくことにして、現在の会社を作った。
退職後、関東経済産業局のマネジメントメンター制度を利用し、専門家として中小機械メーカーの製品の販路開拓を進めている。宣伝方法を持たないメーカーの優れた製品と、会社員時代に付き合ってきたお客さんとのマッチングを行っている。「これからは機械の販売代理や人材育成などの事業も手がけていきたいですね」
会社を立ち上げてもうすぐ1年。一円さんは前向きに今後の希望を語る。(取材・構成 藤木俊明)