年明け早々、定年起業に向け準備を進める海老名要一さん(64)に東京・東銀座の「夕刊フジ定年起業応援サロン」で会い、起業の進捗状況を聞いた。昨年末、元同僚たちとの忘年会があり、その場で自分の起業プランを披露したそうだ。
「やはり一人で考えていると悶々としてしまうことが多く、第三者の意見を聞いてみたくなるのです。反応はマチマチでした」
元同僚の反応は、「すごいね」というポジティブなもの、「ふーん、どうですかね」というネガティブなものの2つに分かれたという。後者のネガティブ反応では、とくに資金面の読みについて「甘い」という指摘を受けたそうだ。
「でも、たしかにその通りなんです。その自己資金でやっていけるのか、という状態です。かつての会社員時代には、年度で予算計画されたことは稟議書を書いて粛々と進めれば特に問題ない生活を長年送ってきました。会社がとても潤っていて、払うものは早く払いたいといった夢のような時もありました。しかし起業したら、お金の出入りを管理するのは自分です。先行きが怪しいとなったら計画自体を見直すなど、厳しい態度で臨むしかありません」
海老名さんは銀座セカンドライフの片桐実央代表が提唱する「ゆる起業」(ゆっくりマイペースでの起業)を心がけて進めてきたが、やはりお金のことだけはシビアにならざるを得ないようだ。家族にも「ゆる起業」の説明はしているが、自己資金についてしっかりとは伝えてはいないらしい。「途中で反対されないように、準備期間中にもフローの収入を増やす努力をして少しでも起業資金を稼いでおきたい」と言う。
そのために海老名さんがチャレンジしているのが、クラウドソーシングによるネットでの仕事受注だ。過去の実績を整理してサイトに登録したところ、パラパラと仕事の依頼がきているという。副業的な仕事だが、会社を退職している海老名さんにとってはレッキとした資金調達の手段だ。
ネットの活用は海老名さんの得意分野。定年起業に備えてのウェブサイトも自力で作成している。
「お金のことは大事ですが、そればかり考えていると気がめいります。年末年始はウェブサイトの作成や点検をしていました」
こうして海老名さんの定年起業に向けての1年がスタートした。 (取材・構成 藤木俊明)