定年を迎えても変わらず働き続けたい。定年起業を思い立って、長年親しくしてきた顧客に打ち明けてみる人もいるでしょう。顧客から「あなたが独立してもそのまま変わらず取引を続けたい」と言ってもらえるとします。ありがたいことですよね。心強いですし定期的な収入も見込めます。しかし、これには大きな問題があります。
これは、所属していた会社の顧客情報を、自分のために活用したと見なされるのが普通です。雇用契約や就業規則に違反とされ、場合によっては会社から訴えられることもあるでしょう。そんなトラブルになれば、顧客も取引を考え直してしまうかもしれません。
スムーズにお客様を引き継ぐには、3つの方法が考えられます。
まず「営業譲渡」です。元いた(あるいは今いる)会社に一定の金額を支払うことにより、顧客を譲ってもらうことです。条件などは契約書に残しておくべきです。
次に「再委託」。顧客と直接取引するのではなく、元いた会社を間に入れて、そこから仕事を請け負う形にします。自分の取り分は減りますが、元いた会社には変わらず一定の収入が入るわけで納得してもらいやすいでしょう。
もう1つは「紹介契約」。顧客とはあくまでも直接取引し、たとえば「売上金の○%」といった紹介手数料を元いた会社に支払う方法です。元の会社と強い信頼関係があればこの方法は可能でしょう。
いくら親しい顧客であっても、そもそもは元いた会社が経費をかけて顧客化したわけですから、無条件に自分の顧客としてしまってはトラブルの元になります。きちんと話し合って円満に引き継ぎ、大切な定期収入にしましょう。 (取材・構成:藤木俊明)