「日本の住宅では必ずと言っていいほど冬季に窓ガラスの結露が発生します。ですが、欧州ではほとんどありません。なぜなら、日本基準より高性能の高断熱ガラス・サッシが使われているからなのです。
私たちは日本の居室内を快適にするため、現状を変える活動を行っています」こう語るのは、窓ガラス・サッシの国際基準製品の普及活動を行う(一社)パッシブウィンドウジャパン(以下、PWJ)の橘重行 代表理事だ。シンガポールのガラスメーカーと共同で高断熱窓ガラス「スーパーペアガラス」を開発したばかりだ。 橘代表が日本と世界の高断熱窓ガラスの基準の違いについて知ったのは、前職の建材メーカーで16年に渡ってシンガポールに駐在していたことがきっかけだった。
30年ぶりの帰国後、日本製品の性能の低さに愕然としたのだ。その後、ドイツの建材メーカーに支社長として在籍し、国際基準の断熱性能の重要性を訴えたものの、日本の設計関係者たちには認めてもらえなかったのだという。「住宅などの建築家たちに対して国際基準の海外製品を提案しても、なかなか話を聞いてもらえなかったのです。日本のメーカーとの繋がりも深いのですが、私も商材販売の営業員として見られていたのでしょう。
そこで、メーカーに籍を置くのではなく、独立した第三者として、国際基準の断熱性能の重要性を訴えつつ、日本に合う窓の開発を考えたのです」こうして2015年にPWJを設立すると、ゼネコンや設計士、デベロッパーなどを対象にセミナーなどを開催。今では徐々に賛同者も増加しており、その歩みは少しずつ芽吹いているようだ。「業界の既得権益が守られてきた現状に、我々が風穴を空けてみせます。今後は高断熱ガラスの普及だけでなく、窓全体のシステムとしてゼロエネルギーハウスの普及にも尽力します」