アジア諸国を中心に、化学品の輸出入を手掛けるKFトレーディングカンパニー(東京都中央区)。同社の福島賢造社長は幼少期から海外事情や外国への興味を持ち、外国で活躍できる仕事として新卒で大手商社に入社。化学品部門の取引を担当し、定年まで約40年間勤め上げた。うち15年は5か国に駐在し、化学品のほかに幅広い分野の商品取引を行ってきた。
だが充実したキャリアの一方、福島社長は年数を重ねるうちに大手商社の実情に気づく。
「貿易業務は取引量、規模の大きさが有利に働く事が多かったのですが、一方で大手商社が扱いづらい市場があるということも感じていました」(福島社長)
こう福島社長が語るように、規模が大きい大手商社はタンカー単位の“大きくて値の張る商材”の売買を得意としている。その反面、手間やコストの観点から取引量が少ない市場を避ける傾向があるという。中でも化学品は種類が多く、商品によって取引単位や規模も様々である。同社が取り扱う商品は1コンテナ単位で取引ができ、大手と競合もせず輸送コストも少ないのが特徴だ。
「在職時は独立しようという考えはありませんでした。しかし、定年後に何をしようと考えたとき、これまでの経験や人脈を生かして起業をすることに決めました。完全に引退するのもまだ早いと思ったのです」(福島社長)
定年退職後、昨年9月ごろから起業の準備を始めて約半年後に同社を設立。現在は調整などの作業に追われる日々である。忙しいながらも、会社員時代に感じていた制約がないこと、自分のペースで働けることに強い魅力を感じているという。