法人向けに新電力プランを販売しているのは、新電力サービス(東京都中央区)だ。
新電力で唯一の東証一部上場企業であるイーレックス社の正規代理店として、飲食店や福祉施設、工場、学校などへ新規営業を行っている。同社が扱うのは再生可能エネルギーでもあるバイオマス。1000キロワット当たりの発電効率は80%以上で、15〜6%の太陽光や30%の風力と比べて高く、3〜8%の電気料金削減につながる。
58歳で同社を起業した沼田洋一社長は、プラントの販売や工場の撤去を行う実家の家業を継ぐはずだった。工学系の大学に入学し、卒業後には某大手メーカーに入社。変電所の設備構築や自社製品の開発を行った。30代も半ばに差し掛かった頃、「家業を手伝ってほしい」と父から声をかけられ、専務取締役として経営関係の業務に携わった。
しかし、家業は決して楽しいものではなかった。転職して10年が経過し、最終的に家業を継いだのは、事業に対しての思い入れの強かった沼田氏の弟。一方の沼田氏は専務時代に経営方法から財務、法務、労務管理などについて必要な知識を蓄積していた。フランチャイズでの独立も考えたが、自己資金の不足で加盟を断念。ちょうどその頃に出会ったのが、電力会社イーレックスの「新規代理店募集中!」の文言だった。無店舗型で人件費と在庫が不要なビジネスだったことや、昨年4月からの電力自由化で需要の高まりが期待できた。また、イーレックス社は以前取引があったことから、信頼性も高かった。2015年春、沼田氏はすかさず起業という道を選択し、新電力サービスを設立。経営者という長年の夢を叶えた。
現在は数十社と契約を締結。「今後は介護福祉施設やオフィスビル、工場を中心に100社と契約するのが目標」と沼田氏は語り、新電力のさらなる普及を見据えている。