中古住宅のリノベーションや耐震診断を行うD.Dreamcraft(ディー・ドリームクラフト・東京都中央区)を53歳で起業したのは、佐土原福利社長だ。大手不動産会社での分業化に違和感を抱いたことが独立のきっかけだった。
鹿児島県出身の佐土原氏は、注文住宅の大工として20代で上京。「手に職をつけ、大工として独立して世界に飛び出したい」と、28歳から7年間、棟梁のもとで腕を磨いた。35歳で大手不動産会社に転職した佐土原氏は、戸建中古住宅のリノベーション部門に配属され、木造住宅の全改修や営業や施工、集金などさまざまな業務を従事。
しかし、分業化された組織の中では、住宅が完成した時にお客さんの笑顔を見る機会がなかった。「もっとお客さんの顔が見える仕事がしたい」「住空間について語り合う機会を作りたい」と思っていた佐土原氏だったが、大手企業でそれを実現するのは難しかった。こうして「大工として独立する」夢を叶えるために、少しずつ起業を考えるようになった。
事業プランは、建築業と不動産業で培った経験を生かし、リフォームや耐震診断にし、設立費用や複雑な手続きがない合同会社で起業することに決めた。妻と子ども3人の父親として、家庭を支える役割もあったが、2年間の説得の末、ようやく独立の夢を叶える事となった。
社名はデザインと大工、DIYの「D」と「住まいの夢と匠の架け橋になりたい」という想いを言葉にした「ドリームクラフト」を掛け合わせた。佐土原氏はこれまで1000件以上のリフォームプラン、500件以上の耐震診断を手掛けてきた。さらに人々と大工が一緒に住居空間について考える機会を持とうと、外装作りを協同で行う体験型セミナーやものづくりについて語る場を積極的に設けている。「空間作りを通じてワクワクできる事業を展開したい」と佐土原氏は話す。