定年後、企業の顧問になる方は多くいらっしゃいます。顧問先の売り上げ向上・業績改善などにつながるアドバイスをする仕事で、1人で起業できるため「シニア起業」では大変人気があります。
ただ顧問の仕事範囲や仕事の方法については、企業によってそれぞれです。具体的に売り先を紹介・クロージングまで同行する方や、アドバイスだけの方もいます。月額顧問料の価格帯は広いですが、考え方として顧問料の3〜4倍以上の売上高への貢献が必要だと思います。自分がいただく金額以上にクライアントに貢献するという姿勢です。
長島明雄さん(69)は、世界でもトップシェアを誇る大手化学メーカーを60歳で定年退職し、その半年後に起業をされました。社員時代は新事業の開発を携わっていたそうですが、技術力の高い会社から提案を受けるものの会社の意向により断っていた例がいくつもあったそうです。
画期的な特許や技術をもっているベンチャー企業に目を向け、早く育てるための応援をしたいという思いから、9年前に新規事業のコンサルティング事業を手掛ける長島商事株式会社(東京・中央)を設立しました。「業種にこだわらず、面白いと思った企業に声をかけている」と語る長島さんは、現在8社もの企業と顧問契約を結んでいます。
顧問先1社目はすぐに決まりました。長島さん個人として興味を持っていた機能性液晶フィルムのメーカーに声を掛けたのです。長島さんは前職で培われたノウハウや人脈を惜しみなく提供。そのメーカーは、今や大手総合商社とも取引のあるメーカーにまで成長しました。
ベンチャー企業からは基本的に報酬をいただかないのが長島さんのスタンス。ベンチャーはお金もないし、応援したい気持ちが先立つからとの理由でした。報酬は長島さんが引き合わせ、ベンチャー企業の取引先となった大手企業などから頂戴するそうです。
ここまで多くの企業とつながりが持てたのは、1社ごとの実績に加え、地道に展示会などに足を運んで築いた関係性が大きいとのことでした。人脈も、定年退職してからのほうが多いそうです。
起業当初から交流会を自ら主催することも続けていらっしゃいます。ベンチャー企業と大学や大手企業との出会いの場です。この交流は「起業して8年も経ち、気が付いた時は周囲の方たちが応援してくれるようになった」とのこと。
起業家は一人でのスタートのため、一緒に仕事がしたいと思った人には直接会って想いを伝え、「まずは自分という人間を知ってもらうことが大事」とのことでした。一度会って、その後も何度か電話をかけていると徐々にお仕事につながるそうです。
また、長島さんは興味を持った多くの資格も取得されていますが、資格を取得する過程でビジネスのヒントが見つかることもあるそう。「感性」と「人を見る力」も大事にしていると語る長島さん。業種の垣根も設けず、自らの好奇心を大事に幅広い事業を手掛けていらっしゃいます。そしてそれこそが起業家のやりがいであると、笑顔でおっしゃっていました。(銀座セカンドライフ代表 片桐実央)