「いつか自分の会社を作って社長になりたい!」――。幼いころに抱いた起業の夢をずっと胸に抱き続けて、実現した方を今回はご紹介します。酒かすエキスを使った洗顔料などスキンケア商品の企画・販売を手掛けるGUSSY(東京・中央)代表の大串透貴(62)さんです。
大串さんは大手化粧品会社に中途入社され、25年以上に渡って新規事業の立ち上げなどに携わってきました。起業のきっかけは58歳の時に会社側から定年後の再雇用を希望するか、判断を求められたことでした。独立のタイミングと判断し子供の頃の夢である起業を決断しました。
大串さんには化粧品業界の水が合ったようです。新規事業の担当として、時には関連会社の社長を務めたりもして自信を深め、スキンケア商品の会社を立ち上げました。
会社名は「おめかしする、着飾る」という意味の英熟語である「gussy up」に由来しています。「人はおしゃれして出かけることで、街のエネルギーをもらって元気になる。その最初の一歩がお化粧だ」と思ったそうで、そうしたメーキャップの助けとなりたいとの思いが社名にも表れています。
大串さんの会社では一から化粧品を企画しています。職業経験から商品が実用化される流れを熟知していることが強みです。製造については、これまでに築いた人脈を駆使し、日本の大手化粧品会社の商品も手掛けるような信頼の置けるメーカーに委託しています。どこにも負けない品質の高いものを作りたい、顧客に喜んでいただきたいというこだわりが誇りです。会社員時代にいつかは自分の会社を立ち上げて、消費者にいいものを届けたいという気持ちをもって仕事に取り組んでいたことが今につながっているそうです。
大串さんは起業における成功の秘訣について、「これまで培ってきた人脈が全てだと思っています」と話しています。商品の製造をお願いしている工場とのつながりもその一つです。もちろん会社員時代は「自分の人脈を広げよう」と意識していたわけではありませんでした。新規事業を生み出して軌道に乗せるためにどういうネットワークを開拓していくかを考えながら仕事をしていましたが、それが自身の起業の際にも生かされたそうです。
大串さんの会社は全国にある大型商業施設にも商品を卸しています。そのきっかけとなったのも会社員時代に親しくしていた取引先のつてだったということです。販売先では値引きなどせず、商品のブランドを大切にしてもらっているそうです。
大串さんはこれまでの経験や人脈を生かし、順調に起業家人生を歩んでいるようですが、こまごまとした事務作業など、いまだに手探りの部分は多いそうです。会社員時代には新事業のプロジェクトが立ち上がるたびに目標に向かってばく進しているような感じでしたが、今は自分のペースで、これまでは見えていなかった細かな作業も含めて一つ一つの仕事を楽しみながらやっています。ゆっくり歩いているからこそ、会社員時代には見えなかった景色が広がってくるのです。
(銀座セカンドライフ社長 片桐実央)