今回は、福祉に関連した「資格取得講座」をオンラインで行うことで、順調に受講者数を伸ばしている、ふくし合格ネット(東京・渋谷)の海老沢浩史社長にお話を伺いました。
海老沢さんは大学在学中に、障がい児のデイサービスでボランティアをしていたご友人に同行したことがきっかけで、福祉の仕事をすることに決めました。大学卒業後の2005年に「社会福祉士」の資格を取得、障がい者施設で働き始めました。
施設で働く中で、顧問をしていた社会保険労務士の方と親しくなりました。話を聞いているうちに、資格を持つことで「独立して働く」ことに興味を持ちました。
日々、業務の隙間時間を利用して勉強をしたそうです。2度目のチャレンジとなった09年に「社労士資格」を取得しました。2つの資格を取得してから独立するまで、大手の資格試験予備校で大学生向けの資格対策講座などの講師を積極的に務めました。
そして、13年に個人事業主として独立してから様々な経験を積みました。現在のメイン事業である「ふくし合格ネット」というオンラインの資格取得講座を本格的に始めたのが19年です。新型コロナウイルスが流行した20年はオンライン授業のニーズが高まり、申込件数は順調に増えていきました。
学生の場合はリアルの対面講座の機会もあります。ですが、オンライン講座の受講生は福祉関連のお仕事を志しているものの、学校に通うには遠いという人もいます。また既に現場でお仕事をされていて時間に制約が多い方が多いです。
海老沢さんは自分が資格取得の勉強をしていた際、質問をしても返信があるまでにタイムラグがあったため、思うように勉強が進まなかったという経験をしました。
このため、ふくし合格ネットでは受講生から質問があった場合は?時間以内に必ず返信をするという「レスポンスの速さ」を徹底しました。またテキストと問題集の編集を同一の講師が担当することで統一感を持たせ、受講する方の理解を助ける工夫などをしています。
当初は「オンライン講座の提供に何が必要か」「どのような方法で拡販するのか」など分からないことが多かったようです。全て自分で調べて業務も手掛けるものだと思っていました。ですが「外注」した方が成果が上がると思った業務については、そのようにしました。
創業1年目は資金繰りが大変で、無給で頑張ったそうです。22年には補助金なども活用し始めました。こうした制度があることを起業時に知っていたら、もっと計画的に事業を進めることができたはずだとおっしゃっていました。
今後は、資格取得講座の数を増やすことや、社会福祉に関する有資格者の方々が交流できるコンテンツ作りも考えているそうです。
オンライン講座は、大規模な教室を用意する必要がありません。コストを抑えて起業することができます。そして優秀な講師陣と良い教材を強みにして事業展開するという方法は様々な分野で参考になります。
(銀座セカンドライフ社長 片桐実央)