今回は、街でよく見かけるキッチンカー・フードトラックの出店を支援する事業で起業された方をご紹介します。
只木輝明さんは2018年5月に45歳でmico(東京・豊島)を設立しました。キッチンカー・フードトラックの出店者と、キッチンカー・フードトラックを止める場所を貸してくれる方を結ぶサービスを手がけています。
只木さんは10年間、営業の仕事をしていましたが、勤務先の経営状況が悪化したことをきっかけに、これからはやりたいことをやろうと思い起業を考え始めました。身近な飲食業界が良いと思いましたが、飲食店で仕事をしたことがなかったため、勉強のためにアルバイトを始めます。
ある時、バイト先の飲食店でキッチンカーを始めることになり、その仕事を手伝っていたところ、「キッチンカーを出店する場所を探すのが結構大変だから、飲食店としては場所を探してくれる業者がいると助かるんだよね」と、飲食店経営者の方が言ったことがヒントになり、現在の事業につながったそうです。
キッチンカーのビジネスについてうかがうと、初期投資は平均200万円程度で、人数は1〜2人が多く、出店場所は2坪程の広さで始められるそうです。出店準備におよそ1か月程度かかり、基本的には長期的な出店を前提としている店が多いとのこと。
場所を変えて営業できることもキッチンカーの魅力と言います。エスニック料理やタイ料理、和食やカレー、お肉料理など、様々な料理のキッチンカーがあるそうです。
「どの場所で、どの曜日に、何の店を出店すればよいのか。それを見極めるのは一筋縄ではいきません。オフィス街と大規模マンションでは客層も全く違います。新宿でヒットしたものが、そのまま渋谷で使えるとは限りません。そういうところが難しくもあり、工夫しがいのある面白さでもあります」と言います。
起業した当初は、キッチンカーの出店はオフィス街などでランチ時間帯での営業がメーンでした。その後コロナ禍には郊外の大規模マンション付近で出店するようになってきたため、営業形態も柔軟に対応しているようです。
コロナ禍になり、起業している多くの方がサービス内容や提供方法の変更を余儀なくされたと思います。只木さんのように、世の中の状況や、顧客のニーズに合わせて柔軟に変えていけることは、事業を継続していく上でとても大事なことだと思います。
最後に事業をしていく上で意識していることをお聞きすると、キッチンカー出店者と、場所を貸してくれる方の両者が「やってよかった」と思える事業にすることだと言います。出店者の方に満足してもらうため出店場所は慎重に選び、支払い頂く出店料も、売り上げの10〜15%と、互いに無理なく継続していけるように設定しています。
また、場所を提供してくれる貸主の方には感謝の気持ちを忘れず、営業中はもちろん、営業後もきれいな状態でお返しできるように、キッチンカー出店者の方に気を付けて頂いています。互いの立場を思いやってこそ、良い仕事ができると信念を持って仕事をしているそうです。(銀座セカンドライフ社長 片桐実央)