今回はカンボジアをはじめとして東南アジア向けの化粧品製造・販売、現地の広告代理業をしているSisyphus(シシフォス、東京・中央)のセム・ナビー社長にお話しを伺いました。
セム社長はカンボジアに生まれました。日本のNPO法人が手掛ける英語教室の先生をしたことがきっかけで、日本に興味を持ち、結婚後に日本に引っ越しをしました。
日本で生活しているうちに日本の化粧品の良さについて大変感動したそうです。自分が子供の頃に育った祖国カンボジアでは海外の安価な化粧品が普及しており、成分の問題から健康被害に発展することも少なくありませんでした。このことを改善すべく「メード・イン・ジャパン」の安心・安全な化粧品を祖国の人にも届けたいとの思いから、シシフォスを2017年に設立しました。海外のお客様には知名度の高い場所が信頼につながると考え、東京駅に近い日本橋で起業しました。
起業してからしばらくは、日本の電子商取引(EC)サイトで化粧品を購入して、それをカンボジアのドラッグストアに営業をかけて販売してもらうことを始めました。しかし日本の化粧品は認知度が低く、営業をかけても断られることが多くて苦労したそうです。
それでも、徐々に店頭に置いてもらえるお店が増えていき、メード・イン・ジャパンの安心・安全な化粧品という口コミがSNSなどで少しずつ広がりました。
3年目から事業が軌道に乗り始めました。仕入れの際は前払いでお取引をする会社がほとんどでしたが、信頼をいただくことで後払いができるようになったり、大手企業とも取引ができるようになったりしました。
流行に左右される商品は取り扱わなかったほか、商品開発でもブランディングを含めてじっくりと手掛けました。東南アジアに珍しい〝日本流〞を貫くことで事業を拡大することができました。
現在は新しく貿易業を手掛けようとする人に対してコンサルティングをしたり、海外のインフルエンサーと連携してオリジナルの商品も販売したりしています。またカンボジアだけでなく、ベトナムやインドネシアを中心に東南アジアなど?カ国に事業が広がりました。
商品の輸出や現地での商品登録、広告宣伝のノウハウがあることも貿易業における大きな強みです。これからは、化粧品などに対して関心が高い富裕層向けではなく、誰でも手に取れる価格帯で質の高い化粧品を作るようにしたいとおっしゃっていました。
セム社長は、カンボジアでの内戦の影響で学生時代にあまり学ぶ機会がなく、経営ノウハウや日本の法律に関する知識を習得するのに一番苦労されたそうです。
しかし起業後に日本人のスタッフやお客様などから多くのことを学ばれました。当初からお客様や消費者、仕入れ先に喜んでいただくことを目標としていました。それぞれのニーズにしっかりと対応した行動力が起業家としての成功要因の1つと言えるでしょう。
(銀座セカンドライフ社長 片桐実央)