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日経MJ・ゆる起業のススメ

2019年03月22日

【50歳からのゆる起業】「やりたい」より「できる」を 金融の経験を生かし助言

 起業するときは、自分の「やりたいこと」より「できること」を優先して起業内容を決めた方が良いです。志水直樹さん(65)は48歳で大手銀行を早期退職し、流通、IT、メーカーという異なる業種でCFO(最高財務責任者)を務め、60歳のときに財務のコンサルティングサービスを提供する会社を起こしました。出会いは、私が講師をつとめた起業セミナーに志水さんが出席したのがきっかけです。


 志水さんは、金融機関に長年お勤めでしたが、コーチングの資格を取得したこともあり、創業当初は、コーチングを主軸とした事業展開を考えていました。しかし、私がアドバイスしたのは、「できること」を優先して起業内容を決めた方が良いということです。わたしは「せっかく財務のキャリアをお持ちなんだから、自分が長く経験してきたことをコア事業にした方がいいのでは?」とアドバイスしました。


その意見を取り入れていただき、志水さんは「社外CFO」として、企業に財務・経営的視点からのアドバイスやサポートを行うウイズ・コンサルティング株式会社を設立されました。しかし、最初の1年はなかなか売上がとれず、つらかったとおっしゃいます。


「だんだん資本金を食い潰す状態が続きました。正直眠れないときもありました。そんな苦しい時、片桐さんに声をかけていただいて九州で行われた行政の起業イベントで先輩シニア起業家としてパネリストを務めさせてもらったのです。パネリストとして話すうちに、何をして自分がお客様の役に立てるのか明確になっていきました。それから助成金申請時にアドバイスをしてもらったのも大きかったですね。申請書を書く上で、自分の事業を見つめ直すことができ、自分は『原点に返ろう』と思いました。中小企業の社長に継続型のコンサルティングをやっていこうと気持ちが固まりました」(志水さん)


志水さんは法人を設立した1年目で、「創業助成事業」という創業支援制度に応募して、見事採択されました。創業助成事業は、公益財団法人東京都中小企業振興公社の実施する事業で、東京都で創業予定の方や、代表者としての経験が5年未満の方に対して、創業初期の資金負担を軽減するために、賃借料、広告費、従業員人件費等の3分の2(上限300万)を助成するものです。助成金は、融資と違って返済不要です。


まもなく「2019年度 第1回創業助成事業」の公募が始まります。今回応募を考える方は、応募は4月12から22日までですので、申請を考える場合は、公社のサイトに掲載されている募集要項を読んで早めに準備しましょう。応募したら全員がもらえるわけではなく、書類審査と面接審査がありますが、審査の過程で志水さんのように事業計画を練り直し、実現可能性を高めることができます。


志水さんの事業がだんだん回りはじめました。今は代々木に個人事務所を開くまでになりました。志水さんは70歳まで働きたいと笑います。


「もし自分があのまま会社に残っていたら、収入的には安定していたでしょう。でも、60歳のときに決断して、自分で切り拓く人生にチェンジしたことで、自分の意志で70歳まで働くことができるようになりました」(志水さん)

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