今回は動画制作事業で起業した市川恵太さん(46)を紹介します。開業した市川映像事務所(横浜市)では、文字や写真だけでは伝えきれない魅力を表現しています。
2001年4月にフリーランスとして起業した市川さんは、全ての作業を1人で手がける映像作家です。高校生のころに友人のバンドのミュージックビデオを作ったことがきっかけで、映像の道に進みました。最初から起業を意識していたそうで、映画の専門学校で学び、映像作家に師事した後に独立しました。
起業して最初の顧客は、以前から仕事で付き合いのあった方の紹介だそうです。人と人とのつながりを大切にされている市川さんの顧客は、リピーターや紹介がほとんど。事業が安定してきたと感じたのは3割の顧客がリピーターになったころだそうです。
すべての作業を1人で行う理由を聞くと、独立直後は外注スタッフに頼んで大人数で撮影したこともあるそうですが、スケジュール調整などに時間がかかり過ぎて効率が良くなかったといいます。
動画制作に音楽は欠かせませんが、最近では海外の音楽配信サービスなどが充実しているので、1人で仕事しやすくなったと言います。ただ、1人で全てを行と「自分が無料で頑張ればい」となってしまいやすいので、企業として自分を1人の従業員として見ることが大切だと語っていたのが印象的でした。
1本の動画制作にかかる時間は、編集なども含めて1カ月ほどで、月に2~3本のペースで制作しています。独立した当初は頑張りたい気持ちと、いつ仕事がなくなるか分からない不安とで、徹夜で無理をし過ぎて何度も体調を崩してしまうこともありましたが、今は健康管理に気を配りながら自分のペースで仕事ができているようです。
1人で起業する方は多いですが、作業を全て1人でやるのか他の人にお願いするのかは考え方次第です。人にお願いする場合は、外注するか雇用するかなどの選択肢があるので、仕事の状況によって選択するとよいでしょう。
制作している動画について聞くと、動画の長さは1分~3分。短すぎず長すぎずで、「なんとなく見始めて気づいたら最後まで見ちゃった」となる程度が良いそうです。顧客がどんな動画にしたらいいのか具体的な内容が決まっていなくても、ヒアリングに時間をかけ、その人らしい、その会社らしい動画にすることを心掛けているそうです。料金は、「1カ月人をひとり雇うぐらいの金額」が目安ですが、要望に合わせて相談に乗ってくれるようです。
これから起業される方に向けてメッセージをお願いすると、「最初は不安がたくさんあると思いますが、代わりに得られる自由とやりがいを楽しんでほしい」と話してくれました。あとは、体調に気を付けて無理をし過ぎないことが大事といいます。「1人だからこその自由はあるけれど代わりはいない」との言葉には強い責任感がありました。
好きなことで起業し、自分のペースで仕事をされている市川さん。成功の秘訣は、製作する動画の素晴らしさだけではなく、その魅力的な人柄なのだと感じました。
(銀座セカンドライフ社長 片桐実央)