今回は、劇団四季出身の有永美奈子さん(44)を紹介します。難病や障害などで劇場に来ることが困難な子供たちにパフォーマンスを届けたいという思いで、2014年に特定非営利活動法人「心魂プロジェクト」を設立しました。劇団四季出身の俳優や元宝塚歌劇団の女優らを中心に結成されたチームで、全国各地の病院、学校、施設などで公演活動をしています。
事業内容は公演を届ける活動だけではありません。そのパフォーマンスを見たお客様が「私も舞台に立ちたい」と手をあげてくれるようになり、その声に応えるため年齢や立場を超えたチームで「ワ-クショップ」なども実施しています。双方向でコミュニケーションを取れるように工夫しているのが特徴です。
起業した当初は公演の実績もなく、依頼がない時期もあったようです。一般有料公演の資金を無料公演の開催費に使用すると手元にはほとんど利益が残らない状況でした。
粘り強く公演活動を重ねていくうちに認知度も少しずつ上がってきたのですが、売り上げが少なく、苦しい資金繰りから抜け出せずに自転車操業で運営していたそうです。
当時はレンタカーを使って頻繁に全国を回っていたので、それが経費を圧迫している1つの要因でもありました。そこで資金調達について調べていたところ、クラウドファンディングを見つけて、すぐに開始しました。有永さんたちの思いが伝わりプロジェクトは大成功し、新車を購入することができました。
また、公演をするための機材を購入する資金として助成金の申請も積極的に取り組みました。有永さんのように、資金繰りに頭を悩ませている経営者は多いと思います。その時は、返済不要の助成金に申請することや、クラウドファンディングでプロジェクトを実施して資金調達をする方法もお勧めです。
公演のクオリティーが上がっていっている実感が出てきた20年に新型コロナウイルスが流行したため、安全面を考慮してすべての公演活動をキャンセルしました。
有永さんは、大変な状況に追い込まれたからこそ、今できることをやってみると考えました。失敗しながら前に進むことモットーに、難病児にパフォーマンスを届けたいという思いで、オンライン公演にやり方をシフトしました。
オンライン配信用にウェブカメラを購入し、普段使用していたパソコンでオンライン公演を始めました。今では2100回以上のオンライン公演の実績があります。
有永さんはこれまでの活動を振り返り、人との出会いが最も大切だと感じています。起業当初は実績も信用もなかったので、なかなか仕事が来ない日々が続きました。しかし、常に人との縁を大切に接することで信用力が上がっていき、会社として経済的な利益にもつながってきたとのことでした。
起業してから事業を拡大して軌道に乗せて、売り上げを安定させるまでは、どの会社も苦労するのが当たり前だと思います。しかし、逆境になっても常に前向きに行動し、地道に事業を進めていけば、解決策が見つかるものだと改めて感じました。
(銀座セカンドライフ社長 片桐実央)