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日経MJ・ゆる起業のススメ

2021年02月26日

【50歳からのゆる起業】花粉症患者向けのマスク開発

 自分の困りごとを解消するため、世にない商品やサービスを作ろうと一念発起する方は多くいます。SmartProductの宮内努さん(60歳)もその一人です。


 宮内さんはフイルムメーカーで営業職をしていました。ただ単身赴任が続いたため、関東に戻って家族との時間を大切にしようと考えて退職を決意しました。その後は人脈を生かしてコンサルタント業をしていましたが、持病の花粉症が年々悪化。市販のマスクをいくら試しても鼻水が止まらず、花粉症の時期は毎年憂鬱だったそうです。


 「気に入ったものがなければ、自分で作ろう」。その思いがマスク事業を始めたきっかけでした。


 「除塵性能をうたうマスクをしても、花粉症の症状が緩和しないのはなぜか」。宮内さんは考察を続け、「生地の除塵能力よりもマスクと顔の間に隙間があることの方が問題ではないか」と考えるようになったといいます。


 マスク着用時に話さなければノーズワイヤでフィットし、マスクと顔の隙間は防げます。しかし、会話するうちにマスクはズレてしまいます。


 そこで「会話中にマスクと顔の間に隙間ができ、花粉が入り込むのが問題ではないか」との仮説を立てました。実際にマスクがズレないように鼻を抑えて話してみると、鼻水は止まったそうです。そしてマスクがズレても、簡単には隙間ができないマスクを研究するようになりました。


 試行錯誤の末、ノーズワイヤの代わりに鼻の形状に合わせて凹凸を付けたノーズパッドの採用にたどり着きました。納得できるマスクが完成しましたが、苦労したのは販路の開拓でした。


 「良いものだ」との自信があるからこそ、花粉症で困っている敏感肌の方や、高齢者に広く使って欲しいとの思いが募ったそうです。しかし、マスク販売の経験はありません。クラウドファンディングや東京都トライアル発注制度に挑戦したほか、ブランド力をつけるため海上自衛隊の補給所で開催された展示会にも参加しました。「できることは何でもやった」といいます。


 売り上げが安定したと感じることができたのは、「コロナウイルスの影響でマスク需要が急増した最近のこと」といいます。ただマスクの重要性が再認識されるようになったからこそ、マスクの改良を続けようと考えています。


 今後は海外展開を見据え、大量生産するための方法も模索中です。今は楽天やAmazonを通じてネット販売しています。顧客レビューで「肌に優しく、花粉症の症状が抑えられて感謝しています」との書き込みを見つけた時は感激したそうです。


 社会貢献できる喜びを原動力に、次は眼鏡が曇らないマスクの開発にまい進しているそうです。


(銀座セカンドライフ社長 片桐実央)

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